2020 Fiscal Year Annual Research Report
Optimization of cancer therapeutic strategies that target tankyrase-specific PARylation
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19H03523
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
清宮 啓之 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 部長 (50280623)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タンキラーゼ / ポリ(ADP-リボシル)化 / がん / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)大腸がんにおける薬効予測バイオマーカーの探索 所内倫理委員会による事前承認のもと、様々な患者由来大腸がん細胞のタンキラーゼ阻害剤感受性に関する検討を継続、拡充した。これにより、タンキラーゼ阻害剤の薬効予測バイオマーカーとしての短鎖型APC遺伝子変異の妥当性を立証するとともに、一部の例外的な感受性細胞を同定した。さらに、これらの阻害剤感受性細胞から典型的な薬力学的マーカー変動を示すものとそうでないものを選別し、それぞれのゼノグラフト(patient-derived xenograft: PDX)マウスを構築した。 (2)大腸がん幹細胞のターゲティング手法としての妥当性と分子機序の検証 タンキラーゼ阻害剤はCD44陽性大腸がん幹細胞が高発現するc-KITチロシンキナーゼの発現を転写レベルで抑制し、同細胞に対してより強い増殖抑制効果を示すことを見出したので、今年度はRNA干渉およびゲノム編集技術により同細胞におけるc-KITの機能修飾を行った。その結果、c-KITはCD44などの大腸がん幹細胞マーカーの発現に寄与し、免疫不全マウスへの移植時のin vivo造腫瘍性に必須の役割を果たしていることが明らかとなった。 (3)合成致死因子の同定とこれに合わせたがん治療モデルの構築 昨年度までの検討により、タンキラーゼ阻害剤の細胞増殖抑制効果を増強するshRNAクローンおよび同効果が現れる複数のがん細胞株を同定することに成功したので、今年度は、トランスクリプトーム解析および免疫生化学的手法を中心として、当該shRNAが惹起する細胞応答を観察した。その結果、当該shRNAとタンキラーゼ阻害剤の間に合成致死性が成立するがん細胞株に固有の細胞応答およびタンパク質の局在変化を見出すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)大腸がんにおける薬効予測バイオマーカーに関しては、患者由来大腸がん細胞、すなわち臨床により近い条件下での候補因子が固まり、さらにはin vivoの検証段階に移行することが出来た。患者由来がん細胞は本来、性質が不安定で継代維持にひときわ多くの労力と時間を要するが、新型コロナウイルス感染拡大による様々な制限のもと、綿密な実験計画を策定することで、実験を堅実に進展させることが出来た。 (2)大腸がん幹細胞のターゲティング手法としての妥当性と分子機序の検証に関しては、前年度までに鍵分子として同定したc-KITが解析の中心となった。細胞レベルから動物レベルにわたる集約的解析を行うことで、同遺伝子が実際にがん幹細胞性に寄与していることを明らかにすることが出来た。特に、従来のがん幹細胞マーカーであるCD44の発現を、druggableなチロシンキナーゼであるc-KITが規定していることを発見出来た点は大きいと考えている。 (3)合成致死因子については、前年度まではタンキラーゼ阻害剤の細胞増殖抑制効果の増強が観察されるがん細胞株とそうでないがん細胞株の差異が全くの不明であったが、今年度はこの差異を規定しうる細胞内候補イベントを見出すことが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)大腸がんにおける薬効予測バイオマーカーの探索 患者由来大腸がん細胞を用いた検討をさらに充実させることで、タンキラーゼ阻害剤の効果予測バイオマーカー候補因子としての短鎖型APC遺伝子変異の妥当性を強化する。また、タンキラーゼ阻害剤感受性細胞のPDXモデルの構築を継続し、in vivoレベルでの制がん効果を立証したい。一方、上述の効果予測バイオマーカー候補因子を持たない患者由来大腸がん細胞でタンキラーゼ阻害剤が有効であった一部の例については、同細胞にタンキラーゼ阻害剤を処理した際の細胞応答をGeneChipマイクロアレイ等で網羅的に解析し、合成致死因子に関する検討とも合流して分子作動メカニズムを明らかにしたい。 (2)大腸がん幹細胞のターゲティング手法としての妥当性およびin vivo併用療法によるproof-of-conceptの検証 これまでに得た知見をふまえ、大腸がん幹細胞のターゲティング療法薬としてのタンキラーゼ阻害剤のproof-of-concept(薬効の論理的裏付け)の達成を目指す。具体的には、タンキラーゼ阻害剤および細胞傷害性抗がん剤の併用効果について、ヒト大腸がん細胞のマウスゼノグラフトモデルを用いて検討する予定である。さらに、このときの腫瘍および血液を採材し、薬力学的バイオマーカーの変動(アキシン2の蓄積およびβ-カテニンの分解)ならびに薬物動態を検証する。
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Research Products
(12 results)