2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a new therapeutic modality using YAP1/TAZ inhibitors against malignant mesothelioma
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19H03527
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
関戸 好孝 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 副所長兼分野長 (00311712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 龍洋 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 主任研究員 (70547893)
向井 智美 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 研究員 (10706146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 悪性中皮腫 / 細胞株 / 分子標的薬 / シグナル伝達系 / 遺伝子変異 / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者らが樹立した、ヒト患者由来の悪性中皮腫細胞株パネル30株および不死化正常中皮細胞株4株(MeT-5A等)を用い、YAP1/TAZ阻害剤に対する感受性の検討を開始した。YAP1/TAZ阻害には研究代表者が共同研究を行った協和キリン株式会社が開発したTEAD阻害剤である小分子化合物K-957を用いた。96 wellプレートを用い、培養細胞を播種後1日目にK-975を様々な濃度で添加し5日目にカロリメトリックアッセイにて吸光度を測定して細胞増殖能を検討した。その結果、MSTO-211H株、Y-MESO-9株など高度感受性(IC50:50%阻害濃度が50nM以下)を示す細胞株が認められる一方、MeT-5A株やACC-MESO-1株、NCI-H2452株などは高度の耐性を示すことが明らかとなった。 K-975に対する用量反応曲線について詳細に検討したところ、K-975に対する感受性は大きく3グループに分かれることが明らかとなった。これらの感受性とHippoシグナル伝達系の構成因子の遺伝子異常(NF2,LATS2等)およびCDKN2A遺伝子やBAP1遺伝子異常との相関について検討した。その結果、感受性とHippo経路の不活化状態との間で一致が見られない細胞株の存在が示唆されたため、遺伝子異常の再解析を開始した。 K-975に対して高感受性を示したMSTO-211H株およびNCI-H2052株を用い、培養液中に低濃度のK-975を添加することから始め、1、2週ごとにK-975の濃度を上昇させることにより、耐性株の樹立を開始した。 さらに、in vivoでのK-975の投与実験を見据え、蛍光を発する遺伝子(ルシフェラーゼ)を中皮腫細胞株に導入しマウスの胸腔に移植したところ、胸腔内における増殖をモニターすることが可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
悪性中皮腫細胞株パネル30株を用い、TEAD阻害剤K-975に対する感受性の違いが明らかとなった。特に不死化正常中皮細胞株はK-975の耐性が高く、悪性中皮腫細胞株に対する選択的な感受性が確認されたことは極めて有意義と考えられた。また、Hippoシグナル伝達系の不活化状態との大まかな相関が確認された。一方、Hippoシグナル伝達系の不活化状態と感受性が必ずしも一致しない細胞株も示唆され、再確認を行う必要性があるものと考えられると同時に、K-975に対する一次耐性に別のシグナル伝達系が関与する可能性も示唆された。 さらに、K-975の耐性株の樹立に向けて順調に実験が開始された。現在、IC50濃度の数倍以上の濃度で細胞が増殖していることを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
YAP1/TAZ阻害剤として他にSuperTDU、イベルメクチン、Verteporfinが報告されており、これらの薬剤に関する感受性について検討し、TEAD阻害剤K-975との細胞増殖抑制効果の差異について明らかにする。K-975はTEADと共有結合して非可逆的な抑制をすることから、K-975の投与期間、投与間隔を変えて、どのような投与方法が効果的かを詳細に検討する。 さらにYAP1/TAZ阻害剤が、どのようなタイプの細胞死あるいは細胞増殖抑制を引き起こすかを検証する。プログラム細胞死を判別する各種のマーカー、アッセイ系、およびセルソーターを用いて解析し、アポトーシスが細胞死の主たる機構か否かを明らかにする。 一方、細胞株パネルから代表的な高感受性および低感受性株を選択し、網羅的発現解析による遺伝子発現の差や、YAP1/TAZの投与による遺伝子発現の変化を解析し、感受性に関する遺伝子発現プロファイルの特徴を明らかにする。 さらに、感受性株の耐性株の樹立を継続し、耐性株が樹立された際には網羅的な遺伝子発現解析を行い、どのような遺伝子が耐性賦与に寄与しているかを明らかにする。 以上の検討が順調に遂行した場合には、細胞株を移植したマウスを用いてin vivo実験を行い、YAP1/TAZ阻害剤が個体レベルにおける悪性中皮腫の増殖抑制効果の検証を行う。
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