2019 Fiscal Year Annual Research Report
イメージングを駆使した光免疫治療のメカニズム解明と汎用性向上へ向けた展開
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19H03593
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小川 美香子 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20344351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久下 裕司 北海道大学, アイソトープ総合センター, 教授 (70321958)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光治療 / PET / 光音響イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、PETおよび光音響によるインビボ分子イメージング法を用い、新しいがん治療法である光免疫療法(PIT)のインビボでのメカニズム解明を目指し、得られた知見をもとに、PITの汎用性・有効性の向上を目指した展開を図ることを目的としている。 2019年度は、低酸素PETイメージング剤であるFMISOを用い、PITの治療効果と低酸素との関連について検討を行った。照射側の腫瘍に関し、FMISOは腫瘍の周辺部に高い集積が認められた一方で、中心部では取り込みが低下していた。腫瘍中心部がPIT後に低酸素になる原因を調べるため、CD31(血管内皮細胞マーカー)を免疫染色した。光照射を行った腫瘍について、治療3時間後で、FMISO陰性領域と比較してFMISO陽性領域では血管の面積の減少傾向が見られた。治療24時間後では、FMISO陰性領域のほとんどが壊死していた。すなわち、早期に低酸素となった領域で治療効果が認められた。 また、がん免疫の状態を把握するため、制御性T細胞PETイメージング剤の開発に着手した。CCR4は細胞遊走に関与するケモカイン受容体で、抗腫瘍免疫を抑制するTregやTh2に発現する。そこで、免疫抑制細胞に発現するCCR4を標的としたPETイメージング剤の開発を目指し、11Cおよび18F標識前駆体の合成に成功した。 さらに、熱緩和過程により生じる音響波を捉える光音響イメージング法では、散乱・吸収の問題を克服できるため、深部病変の画像化が可能である。光照射によりIR700は凝集体形成し蛍光を消失するため、光音響イメージング剤としても用いることができる可能性がありこれを検証した。担癌モデルマウスでのイメージング検討を行ったところ、ヘモグロビンのスペクトルとの分離が困難であった。レーザーの波長域が広いイメージング装置が使えれば画像化できる可能性があるため、2020年度に検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FMISOでの評価を予定通り行った。この結果、早期に低酸素となった領域で治療効果が認められることが明らかになり、インビボでの治療メカニズムにおいても低酸素が重要である可能性が示された。また、PETイメージング剤として、既に報告のある樹状細胞(DC)のイメージング剤である[18F]FETrpの合成を行うことを計画していたが、免疫治療では免疫抑制性のTregのイメージング剤の開発が重要であることがわかってきたため、より有用性の高いTregイメージング剤を新規に開発することにし、標識前駆体の合成まで終了した。光音響イメージングについては、測定した波長域ではヘモグロビンのスペクトルとの重なり(類似)が認められ、問題点が明らかとなった。2020年度以降、解決に向けて検討を進める。 以上のことから、順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に、低酸素イメージング剤[18F]FMISOを用いた検討により、インビボでの治療メカニズムにおいても低酸素が重要である可能性が示された。この結果を受け、今後、さらに糖代謝イメージング剤[18F]FDGの取り込みとDWI-MRIでの経時的なイメージング検討を加えることで、低酸素とエネルギー代謝と血管支配の関連について検討を進め、インビボでの経時的なメカニズム解明を行う。 2019年度に開発したCCR4 PETイメージング剤の前駆体を用い、今後、11C標識18F標識合成検討をすすめる。さらに、18F標識前駆体については、これまでに合成したNO2前駆体とBr前駆体に加え、トリメチル前駆体の合成にも取り組む。 光音響イメージングに関しては、2019年度までの結果を受け、レーザーの波長域が広いイメージング装置を用いて検討を行う。また、シグナルの増強について、薬剤のみを用いてヘモグロビンの影響を排除しインビトロで検討する。 さらに、これまでに開発に成功している長波長IR700誘導体についてインビボでの治療効果について検討を開始する。また、αvβ3を標的化した小分子ペプチドを用いた薬剤について、治療効果の検討を進める。
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Research Products
(15 results)