2020 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血耐性獲得機序の新展開-ATP受容体を介する細胞内分子機構と細胞間相互作用-
Project/Area Number |
19H03769
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
木内 博之 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30241623)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小泉 修一 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (10280752)
吉岡 秀幸 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (20402076)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 脳虚血耐性 / 虚血性神経細胞傷害 / ミクログリア / ATP |
Outline of Annual Research Achievements |
虚血耐性は、軽微な虚血の前負荷 (preconditioning)により、引き続く致死的負荷に対して抵抗性を獲得する現象であり、その強力な神経細胞保護効果は、脳梗塞治療開発の観点から注目を集めている。一方、ATPは生体のエネルギー通貨のみならず、神経情報伝達物質としても機能するが、脳虚血後の神経細胞グリア間の情報伝達においてATPとその受容体(P2受容体)が重要な役割を果たすことが近年明らかになっている。我々はpreconditioningがアストロサイト上のATPイオンチャネル内蔵型P2X7受容体の発現を亢進し、これによりHIF-1αを介して神経細胞に虚血耐性を誘導することを初めて明らかにした。しかしながら、P2X7受容体はミクログリアをはじめとした他の細胞にも発現しており、本検討ではミクログリアのP2X7受容体の虚血耐性現象における役割を検討した。 虚血耐性モデルは雄性C57Bl/6マウスを用い、先端をコーティングした6-0ナイロン糸を挿入し作成した。本モデルでは、15分間虚血によるpreconditioningにより、60分間の致死的虚血への耐性を獲得することができる。Preconditioning後3日ではミクログリアは基底核から大脳皮質にかけ活性化されるが、アストロサイトの活性化は顕著ではなかった。P2X7受容体発現はこの活性化ミクログリアで亢進していた。Preconditioning後7日では、アストロサイトの増殖が増強しており、P2X7受容体を介したミクログリアの活性化が、アストロサイト誘導性の虚血耐性現象を惹起する可能性があると考えられた。 現在、PLXによるミクログリア阻害が虚血耐性やアストロサイト活性化へ与える影響を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスでの虚血耐性モデルが安定して作成できるようになり、本モデルを用いたサンプルから、prreconditioning刺激がATP-P2X7受容体経路を介して、ミクログリアを活性化し、アストロサイト誘導性虚血耐性現象を惹起することが示唆された。虚血耐性現象でのミクログリアの役割を解明するため、ミクログリアの阻害実験を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
PLX投与によるミクログリアの阻害が、虚血耐性獲得へ及ぼす影響を検討する。またこの阻害がアストロサイトP2X7発現に及ぼす影響も検討する。更に、ミクログリアがアストロサイトP2X7発現を亢進させる機序も検討する予定である。 これらの実験が終了後には、その他のサブタイプのATP受容体についても検討を進めていく予定である。
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