2020 Fiscal Year Annual Research Report
マルチオミクスを活用した新規プロテオーム解析技術の創出と脳腫瘍バイオマーカー探索
Project/Area Number |
19H03774
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
木村 弥生 横浜市立大学, 先端医科学研究センター, 准教授 (80391936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立石 健祐 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (00512055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロテオミクス / バイオマーカー探索 / 癌 / マルチオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、患者病変部より独自に樹立した病態再現性の高い、様々なヒト由来脳腫瘍細胞株(patient-derived cell, PDC)を活用して、血清中に分泌される脳腫瘍関連タンパク質を同定するための新技術の確立と、早期診断や治療効果予測などに有用な脳腫瘍のためのバイオマーカーの開発を目指している。そのために、令和二年度は、以下の研究を行った。 まず質量分析装置を用いた網羅的なマウス血清プロテオーム解析技術の検討を行った。その結果、1試料当り約2,000種類のマウスタンパク質を同定できるようになった。次に2種類のPDC(薬剤感受性と抵抗性)を同所移植して腫瘍形成させたマウス、およびコントロールマウスから採取した血清について、質量分析装置を用いたプロテオーム解析を行った。その結果、PDC同所移植マウス血清でのみ同定される、ヒトタンパク質特徴的なアミノ酸配列をもつペプチドが複数存在することが明らかになった。またこれらの中には、薬剤感受性PDC同所移植マウス血清中において、薬剤投与群と溶媒対照群間で量的変動を示すペプチドも存在した。 さらに昨年度実施したヒストンH3の27番目のリジン残基のアセチル化修飾(H3K27ac)抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)と次世代シーケンサーを併用したChIP-seq解析により同定したスーパーエンハンサーが発現制御する、PDCアイデンティティ決定に関与する遺伝子群と、血清プロテオーム解析で同定したヒトタンパク質群を比較した。さらに、これら2つの解析で共通して同定され、公共データベースにおいてグリオーマでのみ高発現することが示されているタンパク質1種類について、患者およびボランティア健常者血清を用いた市販ELISAキットによる検証実験を行ったが、臨床的有用性を示す結果は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和二年度は、早期診断や治療効果予測などに有用な脳腫瘍ためのバイオマーカーの開発のために、2種類PDC(薬剤感受性株と抵抗性株)を同所移植し腫瘍形成させたマウスおよびコントロールマウスの血清プロテオーム解析を実施し、バイオマーカー候補となる分子を絞り込んだ。しかし、これらのタンパク質のバイオマーカーとしての臨床的有用性を示す結果は得られなかった。これについては、ELISAキットなどの検出系の感度や精度の問題、さらには患者検体の保存状態などにも課題があると考えられた。 一方で、本研究により、脳内に形成された腫瘍に由来するタンパク質が血清中で検出できる可能性があるということが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二年度は、PDC同所移植マウス血清プロテオーム解析により、本研究の進捗にかかわる重要なデータを収集したが、早期診断や治療効果予測などに有用な脳腫瘍のためのバイオマーカー候補を特定するには至らなかった。そこで令和三年度は、マルチオミックス解析から脳腫瘍ためのバイオマーカー開発に取り組むと同時に、薬剤抵抗性PDCに特徴的なタンパク質の絞り込みを行い、治療標的候補となる分子の探索も行う。そのために、新たに各PDCのRNA-seq解析を行う。その上で、これまでに取得したChIP-seq解析や細胞プロテオーム解析とのマルチオミックス解析を実施する。また公共データベースに保存されているRNA-seq解析データを利用した相互解析を行い、脳腫瘍のためのバイオマーカー候補や治療標的候補を絞り込む。またそのための方法を検討する。さらに絞り込んだタンパク質について、マウス血清プロテオーム解析データの再評価を行う。
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[Journal Article] Mitochondrial Fission Mediates Endothelial Inflammation2020
Author(s)
Forrester Steven J.、Preston Kyle J.、Cooper Hannah A.、Boyer Michael J.、Escoto Kathleen M.、Poltronetti Anthony J.、Elliott Katherine J.、Kuroda Ryohei、Miyao Masashi、Sesaki Hiromi、Akiyama Tomoko、Kimura Yayoi、Rizzo Victor、Scalia Rosario、Eguchi Satoru
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Journal Title
Hypertension
Volume: 76
Pages: 267~276
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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