2020 Fiscal Year Annual Research Report
骨透明化技術の開発と神経-血管ネットワークに着目した骨代謝異常疾患の病態解明
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19H03777
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 信吾 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (40462220)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越智 広樹 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 運動機能系障害研究部, 研究員 (30582283)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 整形外科 / 組織透明化技術 / 骨代謝 / 臓器間ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
1)骨透明化技術を用いた3次元イメージングと神経-血管ネットワークの定量化:骨組織の透明化技術の開発を独自に進め、質の高い骨内の神経・血管の可視化に成功した。また、骨組織内の各種細胞が蛍光標識されたマウスの骨透明化処理を行い、各種細胞の骨組織内における詳細な分布を3次元的に解析した。また、得られた3次元解析データをもとに、神経・血管の量を定量化する手法を開発した。 2)メカニカルストレス・重力による神経-血管ネットワークを介した筋骨格系恒常性維持機構の解明 a)メカニカルストレス減少モデルマウスの筋骨格系の3次元構造解析:神経・血管が蛍光標識されたマウスに尾部懸垂を施行し、後肢へのメカニカルストレスを減少させた。このマウスの骨組織および筋組織の透明化処理と3次元構造解析を行い、メカニカルストレスの減少が筋骨格系の神経-血管ネットワークに与える影響を明らかにした。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、神経が蛍光標識されたマウスを宇宙ステーション「きぼう」で飼育することを計画しており、宇宙実験に向けた準備を進めた。 b)人工過重力環境で飼育されたマウスの筋骨格系の3次元構造解析:人工過重力環境飼育装置を使用し、神経が蛍光標識されたマウスを3G環境で飼育した。このマウスの骨組織の透明化処理と3次元構造解析を行い、メカニカルストレスの増加が筋骨格系における神経系の形成に与える影響を明らかにした。 3)骨透明化技術の骨代謝異常疾患の病態解析への応用:神経が蛍光標識されたマウスに卵巣摘出術を施行し、骨透明化技術を用いた3次元構造解析を行うことで、閉経後骨粗鬆症の進行が筋骨格系における神経系の形成に与える影響を検討した。また、神経・血管が蛍光標識されたマウスの大腿骨に骨折を作成し、3次元構造解析を行うことで、骨折の治癒過程における神経・血管の分布の変化を観察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り概ね順調に研究は進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)メカニカルストレス・重力による神経-血管ネットワークを介した筋骨格系恒常性維持機構の解明:2020年度に引き続き、メカニカルストレス減少/増加環境飼育マウスの解析を行い、筋骨格系へのメカニカルストレスの変化が、筋骨格系の神経-血管ネットワークさらには筋骨格系の恒常性維持に与える影響を検討する。また、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、神経が蛍光標識されたマウスを2021年12月頃に宇宙ステーション「きぼう」に打ち上げる予定であり、宇宙実験に向けた一連の準備を進めていく。 2)骨透明化技術の骨代謝異常疾患の病態解析への応用:a)閉経後骨粗鬆症:2020年度に引き続き、卵巣摘出術を施行した神経標識マウスの解析を進め、閉経後骨粗鬆症の進行が筋骨格系における神経系の形成に与える影響を明らかにする。 b)骨折治癒:2020年度に引き続き、骨折を作成した神経・血管標識マウスの解析を進め、骨折の治癒過程における神経・血管の分布の変化や骨の細胞との相互作用を明らかにする。 c)顎骨壊死:神経・血管標識マウスにビスフォスフォネート製剤投与と第一大臼歯の抜歯を行って顎骨壊死を誘導し、骨透明化技術を用いた3次元骨構造解析により、顎骨壊死の発症過程における神経・血管の分布の変化や骨の細胞との相互作用を明らかにする。 d)がんの骨転移:神経・血管標識マウスに高転移能がん細胞株を移植して骨転移を誘導し、骨転移病変の透明化処理を行うことで、骨転移病変における神経・血管の分布の変化やがん細胞との相互作用を明らかにする。 3)骨組織内に進入する神経による骨恒常性制御機構の解明:骨透明化処理の結果、マウスの骨組織内に進入する神経を同定しており、このような神経の外科的切除(除神経)が骨恒常性に与える影響を検討するために、骨透明化技術を用いた3次元骨構造解析、マイクロCT解析、骨形態計測等を実施する。
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Research Products
(11 results)