2019 Fiscal Year Annual Research Report
安全で効率の高い間葉系幹細胞由来エクソソームによる変形性関節症治療法の開発
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19H03781
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 憲正 大阪大学, 国際医工情報センター, 招へい教授 (50273719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落谷 孝広 東京医科大学, 医学部, 教授 (60192530)
紀ノ岡 正博 大阪大学, 工学研究科, 教授 (40234314)
弓削 類 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (20263676)
下村 和範 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40755998)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エクソソーム / 間葉系幹細胞 / 変形性関節症 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)は、損傷組織の修復促進効果が知られており、再生医療・細胞治療における優れたソースとして注目を集めているが、MSCが産生するエクソソームを主体とした細胞外小胞(extracellular vesicles:EVs)も、MSC自身と同様の治療効果を示すことが示唆され、MSC由来EVsを用いた新規治療法の可能性も見えてきた。申請者は、変形性関節症に対するMSC由来EVs治療の臨床応用に向けた効率的な治療用EVs調製のための培養条件の確立に向け、本年度は以下の成果を確認できた。 EVsの細胞源は手術時に破棄される滑膜由来MSCとして、通常酸素濃度(20%)での培養条件とEVs回収時に低酸素(1%)刺激を与えた培養条件から得られるEVs(それぞれN-EVs、H-EVs)の分泌量と質を検証した。低酸素刺激培養条件において、単位細胞あたりのCD9陽性EVsの分泌量が各タイムポイント(EVs回収用培地変更後24時間、48時間)で通常培養条件より有意に増加した。滑膜MSCに対する増殖能促進効果は、EVs非添加群(コントロール群)と比較して、N-EVs添加群、H-EVs添加群両群とも有意な増殖促進を認めたが、N-EVs添加群とH-EVs添加群間では統計学的有意差は検出されなかった。また、滑膜MSCに対する遊走能促進効果は、コントロール群と比較して、N-EVs添加群、H-EV添加群とも有意に遊走能を亢進させ、さらにH-EVs添加群はN-EVs添加群に対してもより高い遊走能の促進を認めた。滑膜MSCに対する軟骨分化誘導能に関しては、N-EVs添加群、H-EV添加群ともにコントロール群と比べると、分化誘導中のMSCから得られた軟骨分化関連遺伝子(Aggrecan、Col2A1、Sox9)の発現は抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養条件の変化がmiRNAプロファイルに与える影響を検討するため、第一に次世代シークエンシングを行う予定であったが、条件の異なるEVsの治療効果に明確な差がない状態でプロファイリングを行っても、そのデータのもつ意義の解釈や解析が複雑で困難を極めること、EVsの治療効果の主体となる物質は、miRNAにとどまらず内包されたタンパク質や膜タンパク質も関与している可能性が示唆されており、miRNAプロファイルが治療効果の高いEVを決定するための最優先事項ではないことを踏まえ、miRNAのプロファイリングは保留として、まずは各培養条件で得られたEVsの治療効果の確認を優先することとした。その結果上述したような成果を得ることができた。また、低酸素刺激などの物理的培養条件が産生されたEVsに及ぼす影響以上に、培地の選定がEVsに与える影響がより重要であることも分かってきたため、今後は至適化した培地を用いて効果の検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
低酸素刺激培養条件において、軟骨分化誘導能の亢進が確認できなかったため、培地条件を含めた培養条件を再検討し、より効果的なEVsの探索を行う。今後は培地条件を含めた様々な培養条件・EVs回収条件を検討して、EVsの回収効率および、その後の軟骨分化誘導能実験を行う。また必要であれば、ドナーを変更したり、細胞源を脂肪組織や骨髄由来MSCへと変更し、繰り返し検討を行う。軟骨分化誘導能において軟骨関連遺伝子の発現亢進を認めた際は、長期培養後にグリコサミノグリカンの定量やサフラニンO染色を行うことや、軟骨分化誘導の実験系を、ペレットカルチャーからマイクロマスカルチャーに変更し、アルシアンブルー染色および比色定量を行うことも検討している。より治療効果、特に軟骨分化誘導能に優位性のあるEVs回収条件が確認できた場合には、主にエクソソームが内包するmiRNAについて、大阪大学に設置している次世代シークエンスシステムで網羅的に解析し、通常培養条件と比較して発現量に2倍以上の差があるmiRNAを抽出する予定とする。
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