2019 Fiscal Year Annual Research Report
Pathophysiological study and image analysis of early-stage knee OA by focusing on osteochondrophytes
Project/Area Number |
19H03788
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
岡田 保典 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員教授 (00115221)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石島 旨章 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70365576)
金子 晴香 順天堂大学, 医学部, 講師 (50445516)
デベガ スサーナ 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (30623590)
チレッキ メフメット・ゼイネル 順天堂大学, 医学部, 博士研究員 (10827538)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 変形性関節症 / 骨棘 / ヒアルロン酸 / 画像解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症(OA)の病態解明や早期における診断・治療法開発は喫緊の課題となっている。本研究では、骨軟骨棘(骨棘)に着目しながら膝OA関節病態について研究を進め、以下のような成果を得た。 (1) 膝OA関節の骨棘軟骨部と関節軟骨組織の解析:骨棘軟骨部と関節軟骨組織(n=4)のプロテオーム解析をしてボルケーノプロット図を作成した。その結果、骨棘と関節軟骨での相対変化率が2倍以上異なる246種のタンパク質が同定され、GO解析とKEGG解析により細胞外マトリックスに関わる分子を中心に複数の生物学的プロセスやパスウェイでの発現変動の関係性が示された。 (2) OA関節の骨棘と関節軟骨細胞のスフェロイド(凝集体)培養法の確立:骨棘と関節軟骨から細胞を採取し、細胞低吸着処理U底ウェルプレート中へ播種することで、スフェロイド培養法を確立した。本法では、間葉系幹細胞用培地で培養した骨棘細胞の直径は軟骨細胞よりも有意に大きくなることから、骨棘細胞成分には間葉系幹細胞の含有率が高いことが示唆された。 (3) ヒアルロン酸分解酵素HYBID(Hyaluronan binding protein involved in hyaluronan depolymerization)遺伝子欠損(KO)マウスでの膝OAモデル解析:内側半月板切除と内側半月板脛骨靭帯切離によるOAモデルで検討した結果、KOマウスにおいて骨棘形成が抑制されることを示した。 (4) HYBID阻害物質の開発:植物抽出物ライブラリーのスクリーニングにより、ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)葉とワレモコウ(Sanguisorba officinalis)根茎の抽出物は、皮膚線維芽細胞におけるHYBIDのヒアルロン酸分解活性と遺伝子発現を抑制し、皮膚光老化の抑止効果を持つことを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度交付申請で提案した研究課題のうち、(1)膝OA関節の骨棘軟骨部と関節軟骨組織のプロテオーム解析においては、プロテオーム解析データがほぼ出そろっており、個々の遺伝子産物の組織内での発現と機能解析の段階に入っている。(2)OA関節の骨棘と関節軟骨細胞のスフェロイド培養法においても、スフェロイド培養法を確立し、骨棘細胞には幹細胞の比率が高いことを示すデータを得ている。また、(3)HYBID遺伝子KOマウスでの膝OAモデル解析において、骨棘形成にHYBIDによるヒアルロン酸分解が促進性に働く可能性を示すことができた。さらに、(4)HYBID阻害物質の開発研究で、2種類のHYBID阻害剤物質を見出している。これらのことから、本研究課題の進捗状況は順調と考えている。(1)(2)の研究課題に関しては、来年度に論文にまとめて投稿予定である。HYBID KOマウスでの実験に関しては、骨棘形成におけるHYBIDとヒアルロン酸分解との関係を分子レベルで証明する実験が残っているが、高分子ヒアルロン酸の関節内注射実験や上記のHYBID阻害物質の野生型マウスへの投与実験も組み合わせて証明を試みる。また、滑膜組織で高発現したHYBIDが、膝OA関節液中のヒアルロン酸分解に中心的な役割を果たすとのデータを得ており、来年度論文発表予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、骨棘に着目しながら膝OA関節病態を解析し、特に早期OAの病態解明と診断・治療法開発のための基礎研究を推進することを目指している。早期OA病態解析に関しては、OA関節軟骨破壊の早期病態の中心をなすHYBIDによるヒアルロン酸分解解析を今後も継続・推進する。OA関節軟骨に比較して、骨棘軟骨部の細胞には間葉系幹細胞の比率が高い可能性が示されたので、幹細胞に対する種々の抗体を用いてFACS解析を行い、骨棘幹細胞マーカー分子の同定と比率を確定する。また、現在行っている前十字靭帯損傷患者の縦断的画像解析研究データから、骨棘形成が早期膝OAの発症に密接に関わるとの予備データを得ていることから、骨棘形成を調節する分子機構の解明を急ぐ。このため、骨棘のプロテオーム解析から骨棘形成に促進的に働く経路を見出し、スフェロイド培養法を用いて骨棘形成促進や抑制する候補分子をスクリーニングする。また、HYBIDによるヒアルロン酸分解が骨棘形成に促進的に働く可能性を見出していることから、骨棘形成におけるHYBID阻害剤や高分子ヒアルロン酸投与による抑制効果を解析予定である。
|
Research Products
(10 results)