2022 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of ABO regulation through topological alteration of chromatin structure
Project/Area Number |
19H03916
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小湊 慶彦 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30205512)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
窪 理英子 群馬大学, 医学部, 技術職員 (40747127)
高橋 遥一郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50640538)
佐野 利恵 群馬大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (70455955)
早川 輝 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90758575)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ABO遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトや類人猿では赤血球にABO式血液型抗原が存在するが、猿では血液型抗原の発現が微弱である。そこで、ヒトのABO遺伝子赤血球系細胞転写調節領域(+5.8-kb site)に相当する領域について、類人猿と猿を比較したところ、類人猿ではヒトと同様に内部にlong terminal repeat(LTR)を含むが、その部分が猿ではshort interspersed nuclear element(SINE)であった。そこで、+5.8-kb siteの内部のLTRをSINEに変更したところ転写活性が失われた。従って、猿から類人猿への進化においてSINEからLTRに置換され、+5.8-kb siteが形成され、赤血球系細胞においてABO遺伝子が発現することとなり、赤血球にA抗原やB抗原の出現に至ったと推測できる。猿で血液型抗原の発現が微弱である、その他の理由として、猿ではH抗原発現が未熟であることが挙げられる。A抗原やB抗原の前駆体であるH抗原の合成に関わるFUT1遺伝子の発現に相違があることが予想され、類人猿のFUT1遺伝子イントロン1内にはSINEが存在するが、猿ではその配列が欠損することから、猿から類人猿への進化においてSINEを獲得したことがFUT1遺伝子発現を惹起したと推測されている。このSINEはLTRに接している。そのLTRには多数のGATA結合サイトがあり、ゲノムアノテーションデータはそのLTRが転写活性化領域であることを示唆しており、FUT1遺伝子発現は転写因子GATA-1/2に依存し、その依存度が増すことが推測される。ところで、赤血球系細胞分化においてABO遺伝子発現がFUT1遺伝子発現に先行するという実験結果や骨髄異形成症候群の遺伝子解析結果から、ABO遺伝子発現は転写因子GATA-2に依存し、FUT1遺伝子発現は転写因子GATA-1に依存すると推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ABO遺伝子の発現調節機構の全容を解明し、法医学と臨床上の諸問題を解決することである。そのために、以下の4つのターゲットを設定している。1)発現調節機構の解明、2)ABO式血液型の遺伝子診断方法の確立、3)白血病における血液型抗原減少や癌細胞における異所性A抗原発現の原因解明、4)血液型抗原減少方法の開発。1)に関して、我々はプロモーター、イントロン1内に血球特異的エンハンサー(+5.8-kb site)、遺伝子下流に上皮細胞特異的エンハンサー(+22.6-kb site)を同定してきたので、発現調節機構はほぼ解明されたと考えている。また、それらに対する特異的プライマーを用いたPCRと塩基配列決定により、ABO式血液型の遺伝子診断方法はほぼ確立されている。3)に関しては、白血病における血液型抗原減少の原因として、+5.8-kb siteに結合する転写因子GATA2やRUNX1の変異を報告してきた。症例数を増やしてさらに解析を進める予定である。一方、癌細胞における異所性A抗原発現の原因解明は手つかずである。血液型抗原減少方法の開発として、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の利用を提案している。A抗原やB抗原の合成には多くの糖転移酵素が関わっているが、それらの酵素発現にはどのような制御があるかが未解明であった。令和4年度の研究成果から、ABO遺伝子発現は+5.8-kb siteのLTRに作用する転写因子GATA-2に依存し、H抗原の合成に関わるFUT1遺伝子発現はイントロン1内に存在するLTRを含むエンハンサーとそこに結合する転写因子GATA-1に依存するとの推察に至った。血液型抗原の発現に関わる遺伝子の発現がLTRとそこに作用する転写因子GATA-1や-2であることから、血液型抗原の発現が統合的に理解ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄異形成症候群の患者における血液型抗原減少の原因として、+5.8-kb siteに結合する転写因子GATA2やRUNX1の変異を報告してきた。一方、急性骨髄性白血病の患者では有意となる遺伝子変異が認められなかった(未発表)。そこで、遺伝子変異以外の原因があることが推測された。骨髄の微小環境が白血病化した細胞に作用し、赤血球系細胞の遺伝子発現に影響を及ぼすとの仮説を立てた。白血病の骨髄における微小環境を考慮し、低酸素状態が血液型欠失の誘因となる可能性が考えられた。予備実験を行ったところ、低酸素環境で培養細胞K562を培養するとABO遺伝子の発現が低下することが示された。また、低酸素は転写因子GATA2やRUNX1の遺伝子発現の低下を惹起しないことも示されている。しかし、再確認実験が必要である。ところで、近傍のOBP2B遺伝子の発現がどのようになるかは興味深いところである。今後の実験として、低酸素下での網羅的な遺伝子発現やABO遺伝子プロモーターのメチル化を調べる。また、低酸素環境でのABO遺伝子発現低下が上皮系細胞でも生じるかについて調べる。以上のデータからABO遺伝子発現低下をもたらす原因を考察する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Emergence of an erythroid cell-specific regulatory region in ABO intron 1 attributable to A- or B-antigen expression on erythrocytes in Hominoidea.2023
Author(s)
Sano R, Fukuda H, Kubo R, Oishi T, Miyabe-Nishiwaki T, Kaneko A, Masato H, Takahashi Y, Hayakawa A, Yazawa S, Kominato Y.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 13
Pages: 4947
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Post-traumatic cerebral infarction caused by thrombus in the middle cerebral artery.2023
Author(s)
Hayakawa A, Sano R, Takahashi Y, Fukuda H, Okawa T, Kubo R, Takei H, Komatsu T, Tokue H, Sawada Y, Oshima K, Horioka K, Kominato Y.
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Journal Title
J Forensic Leg Med.
Volume: 93
Pages: 102474
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Reduction of blood group A antigen on erythrocytes in a patient with myelodysplastic syndrome harboring somatic mutations in RUNX1 and GATA2. Transfusion.2022
Author(s)
Hayakawa A, Sano R, Takahashi Y, Okawa T, Kubo R, Harada M, Fukuda H, Yokohama A, Handa H, Kawabata-Iwakawa R, Tsuneyama H, Tsukada J, Kominato Y.
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Journal Title
Transfusion
Volume: 62
Pages: 469-480
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] I536T variant of RBM20 affects splicing of cardiac structural proteins that are causative for developing dilated cardiomyopathy.2022
Author(s)
Yamamoto T, Sano R, Miura A, Imasaka M, Naito Y, Nishiguchi M, Ihara K, Otani N, Kominato Y, Ohmuraya M, Kuroyanagi H, Nishio H.
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Journal Title
J Mol Med
Volume: 100
Pages: 1741-1754
DOI
Peer Reviewed