2019 Fiscal Year Annual Research Report
運動神経を越えた変性をきたしうるALSの病態類型化とその看護法に関する研究
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19H03939
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
中山 優季 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, プロジェクトリーダー (00455396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 俊夫 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (50466207)
長尾 雅裕 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (60466208)
神作 憲司 獨協医科大学, 医学部, 教授 (60399318)
小森 隆司 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳発達・神経再生研究分野, 研究員 (90205526)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / 病変の拡がり / 意思伝達支援 / データベース / 進行予測因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
看護班の経過追跡では、気管切開後の非運動症状の出現傾向や体重推移を収集し、これまで提唱したステージ進行者に非運動症状の出現傾向が高いことを追認した。さらに、AMAS(Autonomic Mental Assessment System)自律神経メンタル評価システムを用いて、気管切開人工呼吸10名の安静時における自律神経の動きを測定した。健常者に比し、LF/HF成分ともに低く、特に意思伝達ステージ進行期での低下が顕著であった。 脳機能班では、ステージ進行期の対象に、BMI機器の適応について試用を継続した。機器の設置は、研究者がその都度説明しつつであるものの、患者家族が行い得た。刺激提示方法として、視覚刺激の設置が2メートル程度でも操作可能であることを示した。また、機器の用途や機器使用の最適化に向けた生理学的評価も進めた。 脳画像による検索では、ALSの乳頭体について頭部MRI上で検討した。乳頭体はステージVで水平断よりも冠状断で萎縮が見られた。これは乳頭体に前方から水平に入力する脳弓の萎縮を反映している可能性がある。 神経生理では、ステージVに至った例の正中神経刺激体性感覚誘発電位(SEP)の経過を後方視的に検討した。病初期にN20の振幅増大を認めたが、呼吸器装着後に進行性に低下し、頭部MRIの所見と照合すると脳幹網様体の萎縮の進行性低下と並行していた。大脳感覚野の萎縮も認められたが、軽度であり、視床については比較的保たれていた。また同時に測定した視覚誘発電位(VEP)は、最後まで保たれており、同じ感覚路でも障害は部位選択性であることが示唆された。 病理では、病理・臨床・看護データベース対象の剖検実施186例のうち、気管切開人工呼吸実施52例(28%)について、運動神経を越える神経変性の有無の検索を進め、ALSでは運動神経に変性が限局する方が割合としては少ないことを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、経過の長期的な追跡による知見での検討を前提としているため、単年度ごとの到達目標を定めにくいが、看護班によるオープンコホートの経過追跡は、今回で12回目を迎え、累計90例となり、これまで提唱してきた傾向の確認と、気管切開人工呼吸療法後の体重の推移による経過比較を可能とすべく、データ収集と分析を続けている。さらに、ベットサイドでの簡便な方法により、自律神経測定が可能となったことで、目に見えない身体活動を数値化し、非運動症状の出現との関係を検討できる体制が整備されつつある。 さらに、脳機能班の開発しているB-assistは、意思伝達ステージの進行期にある対象の自宅での試用が継続的に可能となってきており、対象のモチベーションの維持や外見からは捉えにくい対象の全般的な状態を把握する目安とすることができている。 また、脳画像や神経生理評価の検査の継続により蓄積されたデータより、経過に伴う変化が可視化され、障害の部位選択性に迫りつつある。 病理的な解析の途上ではあるものの、神経変性が運動神経に限局する例の方が少ないことなど体感的に知られてきたことがデータとして蓄積されてきている。なぜ障害は部位選択性なのか、神経変性は運動神経に限局しないのか、といったメカニズムやその課題をどうケアに生かしていくかという点には、まだ道半ばと言わざるを得ないが、検討すべき点の提示、蓄積が進んでいることにおいて、概ね順調に進めていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究班は、これまで主に気管切開後の長期予後による検討、特に意思伝達の可否に焦点を当ててきたが、それに加え、発症、診断時にさかのぼることにより、気管切開人工呼吸までの経過とそれ以降の経過予測といった連続性をもった検討が可能となってきている。これらを、例えば、体重の推移や自律神経測定で得られたデータをパラメータとして活用することで、発症から気管切開人工呼吸までの病勢と気管切開人工呼吸後の経過との関係の分析を進め、予後予測指標としての提唱を目指す。生体信号を用いた意思伝達装置の試用においても、自律神経測定を併用することにより、回答の妥当性についての検証につなげる。さらに、B-assistについて、ステージ進行期における効果的な訓練方法について、さらに精錬していく。 並行して、生理学的では、これまで検討した正中神経刺激に加え、尺骨神経刺激SEPのN20成分が同じように増大するか,それとも神経支配部位により脳の興奮性に差があるのかどうかを検討し、病変の拡がりとの関係を検討する。さらに、自律神経系の指標として、心拍変動の最大エントロピー原理による周波数解析を行い、病初期のALS患者、および呼吸器装着下にある進行期のALS患者において、自律神経異常があるかどうかを検討する。ALSでは、疾患特異的な交感神経機能亢進状態があると言われているが、長期にわたりそれが続くのか、また生命予後とどう関連するのかを検討する。 これらのケア・臨床症状から出た知見を統合させるべく、看護・臨床・病理データベースの作成を進める。特に、全例において、神経変性が運動神経に限局しているか否かの検索を進めることを通し、ALSの全経過、および既存の概念を覆す病態解明に近づけるよう、研究を推進する。
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[Journal Article] ALS-FTD-Q-J research group. Cognitive and behavioral status in Japanese ALS patients: a multicenter study2020
Author(s)
Watanabe Y, Raaphorst J, Izumi Y, Yoshino H, Ito S, Adachi T, Takigawa H, Masuda M, Atsuta N, Adachi Y, Isose S, Arai K, Yokota O, Oda M, Ogino M, Ichikawa H, Hasegawa K, Kimura H, Shimizu T, Aiba I, Yabe H, Kanba M, Kusumi K, Aoki T, Hiroe Y, Watanabe H, Nishiyama K, Nomoto M, Sobue G, Beeldman E, Hanajima R,
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Journal Title
J Neurol
Volume: 267
Pages: 1321~1330
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 神経難病を対象とした緩和ケアチーム(PCT)の活動とその成果の報告2019
Author(s)
清水 俊夫, 木村 英紀, 森島 亮, 清水 尚子, 小野崎 香苗, 新井 玉南, 工藤 芽衣子, 笠原 良雄, 本間 武蔵, 原田 明子, 林 光子, 山口 拳人, 阪口 優理, 中山 優季, 磯崎 英治
Organizer
第60回日本神経学会学術大会
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