2019 Fiscal Year Annual Research Report
呼吸感覚モジュレーションを応用した間質性肺炎予後改善呼吸リハビリテーションの開発
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19H03984
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
海老原 覚 東邦大学, 医学部, 教授 (90323013)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | メンソール / レビー小体病 / αシヌクレイン |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸循環器疾患を有しない健常者25名を対象にして、呼吸困難感へのメンソール(L-menthol)嗅覚刺激の効果を、プラセボ(ストロベリーの香)を用いた無作為化クロスオーバー試験にて評価した。呼吸困難は0から35cmH2O/L/sの段階的吸気抵抗負荷及び自転車エルゴメーターによる10分間の80%嫌気性代謝閾値相当の負荷時に修正ボルグスコアにて測定した。10分間のプラセボ及びメンソール嗅覚刺激前後の肺機能検査において、統計学的有意差を認めなかった。メンソール嗅覚刺激条件下の運動時の呼吸困難感はプラセボに比べて有意に低値を示した。更に、段階的に増加する吸気抵抗負荷における呼吸困難感もメンソール嗅覚刺激の有無で比較した。するとプラセボに比べメンソール嗅覚刺激条件下において呼吸困難感は統計学的有意に低値を示した。プラセボとの差は抵抗が強ければ強いほど大きい結果になった。本研究により、メンソール嗅覚刺激が様々な呼吸負荷時の呼吸困難感を改善することが明らかになった。 パーキンソン病患者は病期が進行すると咳の知覚が低下し、咳衝動感受性が低下し、咳反射が惹起されづらくなり肺炎で亡くなることが知られている。パーキンソン病と同じ神経に過剰なαシヌクレインが蓄積する疾患であるレビー小体病は、パーキンソン病と違い早くから認知機能が低下する。そこで全般的な認知機能の低下とαシヌクレインが蓄積が咳衝動感受性にどのような影響を与えるかを、同程度に認知機能が低下しているアルツハイマー病とレビー小体病を比較することにより解析した。すると同程度の認知機能の低下にもかかわらず、咳衝動と咳反射が正常高齢者と比べて低下しているのはレビー小体病のみであった。つまり加齢による認知機能の低下とは別に、αシヌクレインの蓄積が特異的に咳衝動の認知を低下させてることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調にデータが集積かつ解析され、論文化し世界に発信している。研究の進行は非常に順調と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、メンソール嗅覚刺激が様々な呼吸負荷時の呼吸困難感を改善することが明らかになった。したがって、運動療法中にメンソール匂い刺激によるアロマセラピーを併用することにより、リハビリテーションにおける運動療法の効果が大きく改善されることが期待できることがわかった。アロマテラピーは、一般的には、精油または精油の芳香や植物に由来する芳香を用いて、病気や外傷の治療、病気の予防、心身の健康やリラクゼーションなどを目的とする療法であり、精油を使った医療は、アラビアやヨーロッパで昔から行われている1990年代以降世界的に普及した伝統医学・民間療法のひとつである。現代では、自己管理の健康法としても用いられており、わたしたちはこれをリハビリテーション運動療法における呼吸困難に応用する研究が進行中である。 また、高齢者では,潜在的に咳嗽反射は低下しているが,さらに,中枢神経系の障害である脳血管障害,パーキンソン症候群,アルツハイマー型認知症のような病態では駭嗽反射が低下あるいは消失しているため摂食-嚥下障害,誤嚥性肺炎も引き起こしやすくなる。ただ同程度の認知機能の低下にもかかわらず、咳衝動と咳反射が正常高齢者と比べて低下しているのはレビー小体病のみであることにより、αシヌクレインをターゲットとする誤嚥性肺炎の創薬を探索する。
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Research Products
(7 results)