2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H04056
|
Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
今大路 治之 (中山治之) 香川大学, 医学部, 講師 (80294669)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 知巳 香川大学, 医学部, 教授 (60263810)
高見 英人 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (70359165)
豊田 敦 国立遺伝学研究所, ゲノム・進化研究系, 特任教授 (10267495)
下野 隆一 香川大学, 医学部, 准教授 (60404521)
田中 彩 (西村彩) 香川大学, 医学部, 助教 (30459200)
小谷野 耕佑 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (20437685)
中村 信嗣 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (30437686)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 腸内細菌叢 / 乳幼児 / MAPLE / 機能メタゲノミクス解析 / 抗菌薬暴露 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は香川大学附属病院に入院中の乳幼児のうち、抗菌薬投与後に腸内フローラの異常が2週間以上持続したケースを対象に解析した。3日間抗菌薬を投与された乳幼児から抗菌薬投与1日前、投与後3,6,10,34,71日後の便検体を採取し、それらのメタ16S rDNA解析およびショットガンメタゲノム解析を行った。メタ16S解析から抗菌薬投与後3日目にはBfifidobacterium (Bf)は全く見られなくなり、それに代わって口腔細菌のStreptococcus (St), GemellaおよびRothiaの存在比が有意となることが判明した。その後6日目にはE. coliが最優位となったが、10日目には再びStの存在比が上昇した。34日以降になってようやくBfの復帰が観察された。ショットガンメタゲノム解析からもメタ16S解析と同様の菌種のbin(分別ゲノム)を特定することができた。さらに、詳細なアッセンブル解析により3日目と10日目に検出されたStは優勢な菌種が異なっていることも明らかとなった。また、ショットガンメタゲノム解析から特定できたBf由来のbinは、B. breveおよびB. longumの2菌種のみで、抗菌薬投与前後でB. breveの存在比の大きな変動が認められた。以上の解析より同定されたB. breve、B. longum、E. coli、St2菌種を便検体から分離し全ゲノム解析を終えた。さらに、分離同定した菌種の腸内フローラ再生における役割を検証するために、分離したB. breve、B. longumおよびE. coliを用いて無菌マウスへの投与実験を行った。その結果、E. coliをあらかじめB. breveおよびB. longumと共にマウスに定着させておくとセフメタゾール投与後のB. breveおよびB. longumの回復が早くなることが観察された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実績により抗菌薬投与により破綻した乳幼児の腸内フローラが回復する過程において菌種レベルでの構成の劇的な変動が生じていることを明らかにできた。また、腸内フローラの回復や安定化の鍵になると考えられる菌種を分離同定するとともに全ゲノム解析を終えることができた。さらに、分離した菌株を用いた無菌マウスでの再構成実験により、腸内フローラ再生構成プロセスにおける細菌-細菌間相互作用の一端を観察できた。さらに継続して他検体のメタゲノム解析を進めることでデータの頑強性を補完したい。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き抗菌薬暴露後の乳幼児便検体のメタゲノム解析を行うとともに、リボソームタンパク質の出現頻度から正確な菌種組成を算出し、生理代謝機能ポテンシャル評価システムであるMAPLEを用いて生理・代謝ポテンシャルを比較することにより、抗菌薬投与によって変動する機能や腸内フローラの回復に向けて増加する代謝モジュールを同定する。また、便検体の臨床データ(身長、体重増加量、摂取栄養量、血液生化学データ、抗菌薬投与時の年齢、抗菌薬の種類、投与量、投与経路、投与期間など)の比較解析を再検討し、腸内フローラの回復まで時間と相関するパラメーターを抽出する。機能メタゲノム解析で推定した候補代謝産物の補充により、破綻した腸内フローラの再構成が促進されるか否かを、Bifidobacteriumを用いた培養実験により検討する。破綻期の糞便を回復直前の便懸濁液上清もしくは推定候補物質を含有または含有しないBifibobacterium用の最小栄養培地で嫌気培養する。その後、経時的に菌叢の変化をグラム染色およびDAPI染色、菌叢を構成する細菌の有無をメタ16S 解析で比較し、当該物質が乳幼児の腸内フローラの回復に関与するか否かを調べる。また、機能メタゲノム解析により抽出された機能モジュールから腸内フローラ再生因子の物質特性が推測困難な場合は、破綻期と回復直前に収集した便懸濁液の遠心上清を物性に応じて分画した後、メタボローム解析を行うことも検討する。 上記検討により同定した候補代謝産物の補充により、破綻した腸内フローラの再構成が促進されるか否かを動物実験で検討する。抗菌薬投与により腸内フローラ菌叢を破綻させたマウスに候補物質を投与した群および非投与群における腸内フローラを構成する細菌の有無を経時的にメタ16S 解析により調べ、候補物質が破綻した腸内フローラの再生を促進する作用があるか否かを確認する。
|
Research Products
(3 results)