2019 Fiscal Year Annual Research Report
ダスト発生源の環境修復と持続的土地利用の両立を目指すキーリソース管理手法の開発
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19H04316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大黒 俊哉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70354024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞木 貴史 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 室長 (50514973)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダスト発生源 / キーリソース / 持続的資源利用 / 非平衡環境 / ダスト発生・輸送モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
モンゴル国・ウムヌゴビ県ツォクトオボーのプラヤ状低地域等を中心に広がるゴビステップ(荒漠草原)を対象に、以下の3つのサブテーマについて、野外調査・観測を実施するとともに、空間情報解析およびモデル構築に向けた検討を行った。 (1)キーリソースの分布と利用実態の把握:本年度は、プラヤ状低地の最低点を中心とする範囲を1km×1km程度のグリッドに区切ったうえで、グリッドの中心点付近において植生調査(優占種)を行い、植生タイプを区分するとともに、衛星画像等を用いて植生図を作成した。また、地形・土壌調査を行い、植生タイプごとの土地自然特性を把握した。 (2)キーリソース域における飛砂観測:本年度は、植生タイプごとに簡易飛砂計等により高さ別の飛砂量を観測するとともに、侵食能に関わるパラメータ(風速、降雨、気温等)および、受食性に関わるパラメータ(土壌粒径、クラスト、植生量、リター量等)を測定した。3高度における風速から最大相関法を用いて粗度、地面修正量、摩擦速度を推定した。またダスト観測・気象データから、飛砂フラックス、臨界風速を算出した。その結果、臨界風速に対し、植被率および群落高は明確な傾向を示さなかった一方で、粗度の増大に伴い臨界風速は増大する傾向を示した。本対象地のような植生が疎らで不均質に分布しているサイトにおいては植被率・群落高はダスト発生を十分に説明しないことが示唆された。一方空力学的粗度はダスト発生に直接影響する風速の垂直分布より算出され、ダスト発生をより説明しうることが示唆された。 (3)ダスト発生・輸送モデルの構築とキーリソース保全効果の評価:本年度は、(2)の観測データをパラメータとしたダスト発生・輸送モデルのフレームを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に実施した予備調査の結果に基づき、現地関係機関と連携を図りながら野外調査・観測を実施することができ、研究は順調に進捗した。共同研究者とも綿密な連携を取りながらダスト発生・輸送モデル化のフレーム構築に関する検討を進めている。キーリソース分布・利用実態把握を担当する予定であった者が外国機関へ異動のため分担者から外れたが、研究協力者として引き続き連携を維持しており、研究の進捗に大きな支障は出ていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画にしたがい、野外調査・観測を実施するとともに、空間情報解析およびモデル構築に向けた検討を行う。 キーリソースの分布と利用実態の把握については、対象地における牧草の利用実態、季節移動(オトル)の実績、災害時に主に利用する牧草種と量を把握するとともに、前年度に作成した植生図を用いて、移動経路および牧草利用地図を作成する。キーリソース域における飛砂観測については、前年度の飛砂観測期間および過去のダスト発生日に撮影された衛星デ ータの判読等によりダスト発生地点を抽出し、植生タイプやキーリソース分布域との関係を把握する。とくに、同一植生タイプ内で植生量および分布構造の異なる地点で観測を行い、ダスト発生に関わる植生量の閾値および空間的不均質性の影響を検討する。ダスト発生・輸送モデルの構築については、上記観測データをパラメータとしたダスト発生・輸送モデルのフレームを構築する。
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