2020 Fiscal Year Annual Research Report
ダスト発生源の環境修復と持続的土地利用の両立を目指すキーリソース管理手法の開発
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19H04316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大黒 俊哉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70354024)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞木 貴史 気象庁気象研究所, 全球大気海洋研究部, 室長 (50514973)
柿沼 薫 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 准教授 (20773401)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ダスト発生源 / キーリソース / 持続的資源利用 / 非平衡環境 / ダスト発生・輸送モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)キーリソースの分布と利用実態の把握:本年度は、対象地の牧草を利用する牧民に対して実施したヒアリング調査の結果を元に、過去5年間の季節移動(オトル)の実績、災害時に主に利用する牧草種と量を把握するとともに、家畜の糞および足跡の分布データを昨年度作成した植生図に重ね合わせ、植生タイプごとの利用強度と地形条件等との関連を解析した。 (2)キーリソース域における飛砂観測:本年度は、昨年度に観測した飛砂量、侵食能に関わるパラメータおよび受食性に関わるパラメータに関するデータを用いて、臨界摩擦速度および飛砂フラックスと灌木植生分布パターンの関係を解析した。灌木の水平分布に関するバリオグラム算出時に求められるレンジを灌木間距離の指標として解析した結果、植被率が同程度の時にはレンジが小さい方が飛砂フラックスが小さいことがわかった。このことから、植被率だけでなく灌木の分布様式も風食の発生と抑制に影響を与えることが示唆された。また、レンジ(灌木間距離)の大きなサイトは灌木の定着後長時間が経過していると考えられることから、風食抑制のためには補植による灌木間距離の低減などを組み合わせた継続的な維持管理が重要であることが示唆された。 (3)ダスト発生・輸送モデルの構築とキーリソース保全効果の評価:本年度は、(2)の観測データをパラメータとしたダスト発生・輸送モデルとして、Mosaic Arid Land Simulator (MALS)とWind Erosion Assessment Model (WEAM)の統合モデルの改良を行った。また、ひまわり8号のエアロゾル光学厚さデータを利用したデータ同化手法について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19による入国禁止措置の影響で、当初計画していた現地調査観測を実施することができなかったため、進捗はやや遅れているものの、一部の研究項目を既存データや衛星画像を用いた解析やモデル改良等、現地での活動を伴わずに実施できる方法に切り替えるとともに、モンゴル生命科学大学の研究協力者に現地観測データの取得を依頼する等の代替措置を取りながら研究を進めており、当初計画からの遅れは最小限にとどまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象地のモンゴルでは、COVID-19の感染が拡大している状況にあるため、渡航の制限が継続すれば研究進捗への影響は小さくないが、モンゴル生命科学大学等の研究協力者との検討体制を維持・強化しつつ、渡航再開時に速やかに野外観測調査が実施できるよう準備を進める。また、渡航制限が長期化した場合に備え、研究協力者にデータ収集を依頼できるようなオンライン支援体制を整備する。研究内容についても、キーリソース管理に関する対面調査をウェブアンケート形式に変更する、地理情報システム・リモートセンシングを活用したダスト発生地点抽出等の技術開発を強化する等、渡航制限の影響を受けにくい手法の導入を積極的に検討する。 以上の結果に基づき、今後のキーリソースの保全管理オプションを複数設定したうえで、「キーリソース利用の持続可能性(飼料価の変動により評価)」および「ダスト発生抑止効果(バイオマスの変動により評価)」の両面から対策の適用効果を評価する。
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