2020 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンライチョウ寄生原虫の寒冷地共生進化経路の解明と保全に向けた実践的病態解明
Project/Area Number |
19H04319
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松林 誠 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (00321076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝原 友幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 上級研究員 (00355207)
小林 篤 東邦大学, 理学部, 訪問研究員 (30838917) [Withdrawn]
土田 さやか 中部大学, 応用生物学部, 講師 (40734687)
牛田 一成 中部大学, 応用生物学部, 教授 (50183017)
笹井 和美 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (70211935)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ニホンライチョウ / アイメリア / 寒冷地 / 寄生 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
氷河期の遺存種であるニホンライチョウに寄生するアイメリア原虫について、寒冷地での原虫の生存生態および宿主との共生戦略およびその進化過程は明らかにされていない。本年度、ライチョウの周年の感染動態を調査した。その結果、一般に知られる家禽のものとは異なり、夏季以降においても本原虫に感染し続けていることが明らかとなった。今後、春季での増殖再開の有無について、継続的に調査および解析を行う。また、野生下で死亡したライチョウの病理組織解析、抗アイメリア抗体による解析では、十二指腸から盲腸、回腸にかけて、粘膜上皮に寄生する多数の原虫が確認できた。病態解析のため、ニホンライチョウの同種別亜種にアイメリア原虫を試験的に投与した。その結果、下痢や沈うつ等、死亡した。n数が十分確保できなかったため、確認試験は必要であるが、野外のライチョウは高率に感染し、生存している個体がいることから、ライチョウはこれらのアイメリア原虫に対して何らかの生存戦略を有している可能性が考えられた。現在、いくつかの候補要因について、検討を開始している。分子系統進化を解析するには、近縁鳥類のアイメリアのデータが必要である。しかし、世界的にデータが不足しているキジ目鳥類のアイメリア原虫について、既報の形態学的情報を精査し、同時に国内のキジ目について調査を実施した。結果、国内のキジにおいても、高率にアイメリア原虫に感染していることが分かった。調査飼育場では過去に死亡事例も報告されていた。現在、これら検出されたキジに寄生するアイメリア原虫の塩基配列の解析を行っている。また、北欧にもライチョウが生息しており、これらのアイメリア原虫について遺伝子解析を行った。結果、ニホンライチョウに寄生するアイメリア原虫の1種は北欧のライチョウのものと同一種である可能性が示唆された。さらに家禽のアイメリアに遺伝的に近縁であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニホンライチョウの病態、分子系統解析、さらに国内外での近縁鳥類の原虫解析も順調に進んている。特に北欧に生息する複数のライチョウ亜種のアイメリア原虫の解析を行えた。分子進化を考察するうえで重要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
アイメリア原虫の分子系統解析を実施するため、国内外の近縁種または同種別亜種のアイメリア原虫のさらなる遺伝子解析を実施する。また、実際に生体を用いて感染性を評価し、病態を明らかにする。また、共生進化を成し遂げたいつくかの候補要因について、検討を開始する。
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Research Products
(4 results)