2019 Fiscal Year Annual Research Report
耐性菌パンデミック回避を目指す下水処理システムの最適化
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19H04330
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Research Institution | Kisarazu National College of Technology |
Principal Investigator |
大久保 努 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (60581519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 繁樹 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (60300539)
井口 晃徳 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 助教 (60599786)
安井 宣仁 近畿大学工業高等専門学校, 総合システム工学科 都市環境コース, 准教授 (90547481)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 耐性大腸菌 / 下水処理 / 消毒システム / 耐性遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,木更津市近隣の下水処理場を対象に,耐性大腸菌の測定手法の確立と多剤耐性大腸菌株(2剤以上の抗生物質に耐性)の存在割合の検出を試みた。対象とした下水処理システムは,同一の下水を処理する標準活性汚泥法とDHS法の2種類とした。流入下水に対する最終処理水の大腸菌除去率は,標準活性汚泥法で2log程度,DHS法で3log程度を示した。検体数(釣菌数)に占める耐性大腸菌の割合は,標準活性汚泥処理水で87%,DHS処理水で48%となった。一方,両処理法の汚泥に着目すると液試料とは対照的に,活性汚泥で58%,DHS汚泥で76%となり,高濃度汚泥を保持するDHS法により大腸菌が吸着・保持される傾向が示された。標的微生物検出はCARD-FISH法を適用した。薬剤耐性菌のモデル微生物として,pCR-2.1 プラスミドベクターを有するEscherichia coli K12株を用い,16S rRNA遺伝子を標的とするHRP標識プローブを用いたCARD-FISH法の最適化を行い,E. coli細胞の特異的な検出を行うことができた。 薬剤耐性菌とし複数の抗生物質に対して耐性を有する多剤耐性大腸菌を対象に低圧紫外線ランプ照射による不活化特性を評価した。また比較対象として本研究で用いた抗生物質に耐性を有さない大腸菌および純菌株も用い評価した。薬剤耐性の度合いにより紫外線照射における不活化速度が異なり,耐性を多く有しているほど不活化速度が遅い傾向が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,下水中の耐性大腸菌の存在割合に関するデータ蓄積,耐性遺伝子伝播の評価の予備実験,新規消毒技術の開発に向けた予備実験等,当初の計画通りに進めており,おおむね順調に進展している。予定通りCARD-FISH法の構築ができたことにより、次年度は薬剤耐性遺伝子の特異的検出の実験を進める。不活化効果の検証においても,基礎的なデータの取得,薬剤耐性の異なる大腸菌に対しての不活化効果を評価検討した。引き続きデータの蓄積を行っていく予定であり,当初計画通り順調に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナウイルスの影響もあり,当初予定していた木更津高専へのラボスケールリアクターの設置は維持・管理の面から当面中止で考えている。そのため国内で稼働中の種々の実機下水処理システムに対象を広げ,耐性大腸菌の消長に関するデータの蓄積を図る予定である。また,in vitroの実験で耐性遺伝子の垂直・水平伝播メカニズムの解明に向けた実験を開始し,耐性遺伝子レベルでの評価を行う。耐性遺伝子を保有する大腸菌に対して蛍光in situハイブリダイゼーション法 (CARD-FISH法) を適用し,耐性遺伝子保有大腸菌のin situでの特異的検出を試みる。 耐性菌に対する新規消毒技術の開発については,一般的に広く用いられている低圧紫外線ランプ,高圧紫外線ランプならびに昨今注目されている深紫外LED等の波長の異なる紫外ランプを用い,照射条件等を考慮し,耐性菌に対する消毒効果を評価する。また併せて光回復についても評価を試みる。
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