2021 Fiscal Year Annual Research Report
耐性菌パンデミック回避を目指す下水処理システムの最適化
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19H04330
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Research Institution | Kisarazu National College of Technology |
Principal Investigator |
大久保 努 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (60581519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 繁樹 木更津工業高等専門学校, 環境都市工学科, 教授 (60300539)
井口 晃徳 新潟薬科大学, 応用生命科学部, 准教授 (60599786)
安井 宣仁 近畿大学工業高等専門学校, 総合システム工学科 都市環境コース, 准教授 (90547481)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 耐性大腸菌 / 下水処理 / 消毒システム |
Outline of Annual Research Achievements |
下水処理DHSリアクターの流入水と処理水を対象に、薬剤耐性菌割合の変化とサンガーシーケンスを用いた微生物の属レベルでの特定を行った。処理過程で薬剤耐性菌の割合は上昇したが、属レベルで判断するとEscherichia属が減少したのに対しShigella属及びAeromonas属の割合が増えたことから、DHSではShigella属及びAeromonas属にとって増殖や薬剤耐性遺伝子の受け渡しに関して有利な環境が形成されている可能性が示唆された。また、培養によるバイアスなしに環境中の薬剤耐性菌を網羅的に解析可能な方法として、蛍光in situハイブリダイゼーション法と蛍光細胞分取装置 (FACS)、次世代シークエンス解析を併用した環境中の薬剤耐性菌の網羅的検出技術の開発を行った。標的プラスミドDNAにコードされた薬剤耐性遺伝子のコピー数が少ないことに起因する蛍光検出感度の低下を、新たな蛍光増幅キットを活用することで改善し、FACSによる目的細胞の回収が行えるレベルにまで引き上げることができた。 消毒技術の開発では、各種病原微生物、主に薬剤耐性大腸菌を主として新光源である深紫外LEDならびに低圧・高圧紫外線ランプを用いた不活化を実施し、異なる波長域での不活化特性を一律で評価する手法を構築した。同時に、大腸菌ファージを用いた紫外線照射による遺伝子発現量の減少割合を評価することで、感染価が直接測定困難な不活化を遺伝子減少割合から逆算し、見かけの感染価不活化率を算定する手法を提案することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル微生物として大腸菌 Escherichia coli菌体 (アンピシリン耐性プラスミドDNA保有) を用い、βラクタマーゼ遺伝子に結合可能なHRP標識オリゴヌクレオチドを使用したCARD-FISH法を適用した。従来の蛍光シグナル増幅(TSA)試薬では、FACSによる細胞回収が十分に可能なほど蛍光強度を確保できなかったことから、従来試薬の20倍の蛍光強度を発揮するTSA-plus試薬を用いることで、アンピシリン耐性遺伝子保有のE. coli菌体の回収に十分な蛍光強度を確保することができた。 消毒技術の開発では、指標微生物として薬剤耐性大腸菌および緑膿菌、黄色ブドウ球菌の紫外線照射における基礎データが蓄積されてきており、併行して光回復特性の評価についても着手している。また紫外線の出力、ランプ発光波長分布も考慮した紫外線ランプ種が異なる際の不活化評価手法が構築できたことから、エネルギー効率を勘案した不活化評価方法を構築すべく基礎データの取得が出来ている。
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Strategy for Future Research Activity |
TSA-plus試薬による蛍光シグナルを増強させたCARD-FISH法を活性汚泥やDHS汚泥などの環境試料に適用し、実サンプル中の薬剤耐性遺伝子を保有する微生物種を明らかにしていく。将来的には、薬剤耐性遺伝子の伝播経路や伝播のメカニズムを明らかにするための有効な手法として利用できるようにしていきたい。 消毒技術の開発では、深紫外線として、よりDNA吸収に効果が期待されている主波長265nmの深紫外線ランプによる不活化および光回復データの取得を行っていく予定である。現在までに蓄積したデータを統合し、使用する紫外線ランプの病原微生物に対する効果と限界を明らかにしていく。
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