2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of genetic and demographic database and an estimation of population size using AI technology
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19H04358
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
萩原 潤 宮城大学, 看護学群, 准教授 (90347203)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 家系図 / 人口 / 婚姻規制 |
Outline of Annual Research Achievements |
約20万年前にアフリカで現生人類が誕生してから世界各地への拡散について,近年の遺伝子研究で明らかになりつつある。その一方で人類拡散に影響を与えたと考えられる人口増加に関する報告は乏しい。伝統社会において世帯調査データを分析対象とする家系人口学によってある程度の推定は可能だが,推定期間は限界がある。本研究はパプアニューギニアの狩猟採集耕作民ギデラを対象とした約2000人の世帯調査データに,同地で採取した約700人の生体試料データから解析された遺伝子データを結合し,人工知能技術を用いて過去数千年における人口の変動を推定することを目的とする。本研究の成果は人類の拡散に人口増加が与えるインパクトを考察するうえで,重要なモデルケースとなることが期待され,本研究の方法論は人口学や地理学,遺伝学といった枠組みを超えた学際的な分野となることが期待される。 本年度はこれまでの研究によって得られた家系図データを電子化,データベース化した。これまでの家系図データはノートの記述されていたものなので,これを入力した。入力作業に当たり,本人を識別するコードだけでなく,関係性を示すデータも必要であり,データベースの要件定義について検討を重ねた。 データベースシステムについては,さまざまなクエリーによって必要な情報が抽出抽出できるよう,システム業者と検討を行い,父系,母系,複婚など人間社会において行われる複雑な婚姻規制についてデータを抽出できるようにした。またグラフィカルな家系図がアウトプットできるように検討を重ねた。これは家系図データが得られたパプアニューギニアにおいて現地住民への情報の確認などに必須である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの家系図データの電子化,データベース化については一応の完成がみられ,今後ギデラ社会において出生,死亡,あるいは婚姻と言った現象の定量的な判断が可能になった。さらに,現地住民からの聞き取りによって得られた姉妹交換婚やクラン内の婚姻忌避といった婚姻規制の実態をクエリーによる抽出によって把握することが可能になった。また,家系図の出力機能によってこれまでは手書きによって出力されていた家系図がコンピュータを用いたグラフィック表示となり,劣化のない大量コピーが可能になった。 本来であればデータベースシステムによって作成された家系図をパプアニューギニアに持ち込み,現地住民と情報の確認を行う予定であった。大量にコピーすることで確認作業が同時並行で行うことができるため,作業の効率が期待されたが,コロナ禍による海外渡航への規制や,外部者との交流に対して忌避感を持っているとの現地住民の声もあり,渡航することができなかった。オンラインによる会議も検討したが,web会議を行うほどの帯域の大きなネットワークや機材が現地で調達することが難しく,またネットワークや機材の利用に関わる費用負担が難しいため,こちらも断念せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後遺伝子解析を行う。これまで遺伝子解析のために必要な検体などの確認をして,解析対象を検討してきたので,今後の解析を進めることとする。この解析によって極めて閉鎖的なギデラ社会における遺伝的特性や特定の表現型に対応する遺伝子等の特定など副次的な結果も期待できる。 家系図データについては今後コロナ禍によるによる影響を鑑みながらパプアニューギニアへの渡航を検討する。現地住民と家系図の確認を行うことで調査時の聞き取りや転記,あるいは現地住民の記憶違いなどによる家系図の相違を確認する。コンピュータによるデータベースシステムによって大量にコピーすることで確認作業が同時並行で行うことができるため,現地までの渡航に時間がかかるものの,滞在時間の短縮など作業の効率が期待される。 これらに加えて,深層学習プログラムの開発も行う。深層学習でよく利用されるpythonプログラム言語を利用する。この言語によってこれまでに多くの深層学習ライブラリの蓄積があるため,本研究で活用が可能なライブラリを検討・検索する。そのうえで,家系図データベース,あるいは遺伝情報を読み込むためのプログラムを開発する。テストを重ねて想定される動きがあることを確認したら深層学習に関するパラメータを変更させて過去の人口を予測する。
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