2020 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの変容する移動ネットワークと創発的紐帯の形成:生活圏についての実証的研究
Project/Area Number |
19H04360
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
伊地知 紀子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40332829)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸徐 映里奈 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (00822719)
櫻田 涼子 育英短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (30586714)
松田 素二 京都大学, 文学研究科, 教授 (50173852)
芹澤 知広 天理大学, 国際学部, 教授 (60299162)
加藤 敦典 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (60613750)
伊藤 まり子 京都外国語大学, 国際言語平和研究所, 客員研究員 (70640887)
中川 加奈子 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (80782002)
古川 彰 関西学院大学, 特定プロジェクト研究センター, 客員研究員 (90199422)
洪 ジョンウン 大阪市立大学, 人権問題研究センター, 特任助教 (10882194)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東アジア / 移動ネットワーク / 創発的紐帯 / 生活圏 / 共同体 / 共同性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の2020年度の計画は、①既存研究の検討:東アジアの移動に関する先行研究を検討しながら、移動とこれにともなう生活世界の潜在力について共通の視座を共有するために、分担者および協力者とともに研究会を開催し、社会学的視点に人類学的知見も重ねながら議論を深める。②インテンシィブなフィールド調査:紛争・和解班は韓国、ベトナム、日本を対象地とする。ケア・キンシップ班の調査地はベトナム、マレーシア、日本である。信仰・帰属班はベトナム、中国が対象地である。環境保全・市場経済班の対象地はネパール、日本である。各自がフィールドでの人びとの移動時期や経路、移動時の地域社会、移動先での生活、送り出し側の生活変容について、フィールドワークを実施するというものであった。 しかしながら、2020年度はCOVID-19感染拡大のため、全体の計画の再調整を行なった。各自のフィールドワークの蓄積と本課題を踏まえた応用可能性を模索すべく、文献研究会を定期的に開催した。また、文献研究会を経て、各自の応用可能性を結びつけるためのワークショップを開催した。具体的には、各自の調査成果と発展的展開につながる文献に基づく研究報告を行い、代表者・分担者とともに本課題の論点に重ねながら検討を行うというものである。いずれも、行動制限のかかる中で、オンラインと対面の同時開催を実施した。国内での調査や海外出張ができず、予定していた研究計画はほとんど進まなかったが、制限下で可能な取り組みを実施することにより、当初は構想しえなかった議論との連携を見出すことが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者・分担者は、長期間共同研究を実施してきた。そのため、各自の研究蓄積、および研究目的・方法については十分に共有してきた。ところが、COVID-19感染拡大のため2020年度は、国内での調査は行動制限により困難が大きく海外出張もほぼ不可能であった。このため、予定していた研究計画はほとんど進まなかった。また、既存データの共有、関連文献についての研究会も定期的にオンラインと対面の双方で開催したが、十分な成果を得るに至らなかった。そのため2020年度計画の大半は、2021年度計画に繰り入れることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、本課題は、マクロな社会変動のなかで、それぞれの地域を生きる人びとが、新たな局面に対処すべく多様な紐帯を活用創出し、従来の生活世界を完全に解体することなく日常を営んできた過程に着目し、以下の2点についての調査研究を進める。 1点目は、19世紀末以降の東アジアでの社会変動にともなう移動の質的変化について、代表者と分担者の研究蓄積がある韓国・日本・ベトナム・マレーシア・ネパールでの移動の具体像を時代背景とともに明らかにする。その際、人びとが経験してきた移動、分断、喪失、連帯をめぐる紐帯の生成と変容を主軸とし、関係・ネットワークの形成、扶助・紛争をめぐる共同性、衣食住をめぐる実践の事例を蓄積し比較分析する。韓国の場合、歴史的には朝鮮半島全体と日本との間の移動について現在に至るネットワークが存在する。このネットワーク自身、植民地期、解放後の済州4・3事件、朝鮮戦争と南北分断の固定化を受け内実は錯綜している。従来の研究では、こうした錯綜するネットワークを形成する個人的実践への分析が蓄積されてきた。しかし、本研究では、移動する個人の主体性に焦点を当てて議論するよりも、当該個人も含めた家族やコミュニティとの多様で複雑な関係そのものを対象とする。日本、ベトナム、マレーシア、ネパールにおいても同様に考察する。 2点目は、1点目から得られた成果をふまえ比較分析を行い、紛争と再生、ケアとキンシップ、信仰と帰属、環境と市場経済という4系から、生活圏の変容と再編を複眼的に示す。
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Research Products
(16 results)