2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Body of Knowledge for Risk-Adaptive Regional Management Information System (RAISBOK) and its implementation guidance
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19H04412
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
畑山 満則 京都大学, 防災研究所, 教授 (10346059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 祥子 慶應義塾大学, 看護医療学部(藤沢), 准教授 (00338203)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 災害対応 / 知識体系 / システム開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
(a)災害対応を支援する情報システムの開発・導入プロセスの分析 阪神・淡路大震災(1995年)における災害廃棄物処理管理システム(神戸市長田区)、中越地震(2004年)における罹災証明発行支援システム(新潟県川口町、十日町)、東日本大震災(2011年)における罹災証明発行システム(栃木県那須烏山市)、熊本地震(2016年)における支援物資管理システム(熊本県)、平成30年7月豪雨(2018年)などnにおける支援見える化システム(JVOAD)、房総半島台風、東日本台風(2019年)におけるLINE先遣隊システム(JVOAD)の開発・導入について成功・失敗の要因分析を行った。 (b)リスク対応型情報システム開発・導入プロセスの知識体系化 ITコンサルタントの村上氏(ゴール・システム・コンサルティング)、塩田氏(クリエビジョン)に、(a)の調査結果と既存の知識体系などを活用した開発・導入プロセスに関するヒアリング調査を行い、BABOK(業務分析知識体系)の活用について示唆をいただいた。この調査から「業務分析が十分でない状態で、行政の要求通りに構築したシステム」では、ユーザの期待に応える災害対応支援ができないとの仮説を導いた。本仮説を検証するために、大阪府枚方市(大阪北部地震の被災自治体)の総合防災訓練において、市側の要求に沿って避難者情報管理ソフトウェアを構築して提供した。訓練後のインタビュー調査では、実際の災害時での運用は困難であるという意見が多く得られ、その原因はシステムが仕様通りに構築されないことではなく、当初の仕様そのものにあることが明らかとなった。また、訓練時と開発過程に認識された課題について考察し、災害時に特有の不確実要素として、災害対応業務の詳細、業務量、リソース、ユーザ、前提条件が存在し、これらによってユーザの要求に漏れや曖昧さが生じたことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(a)災害対応を支援する情報システムの開発・導入プロセスの分析 調査対象に以外にも、茨城県 防災・危機管理部、大阪府枚方市 危機管理室にも危機管理時に活用するシステムの導入プロセスについてヒアリングを行っている。茨城県は、平成27年9月関東・東北豪雨において、鬼怒川の氾濫により甚大な被害(常総市)を経験しており、システム導入を行っているが、災害発生時の想定業務からの業務変更に伴うシステム変更にも対応できるように契約を工夫している。枚方市は、2018年に発生した大阪北部地震発生時に、情報収集と活用に問題があり、対応のシステムを改修している時期であったため、改修のポイントや、それ以前に導入されていたシステム(被災者支援システム)が、大阪北部地震時に活用されなかった経緯についてもお聞きすることができた。これらの内容も今年度に整理して分析結果に加えられる予定である。 (b)リスク対応型情報システム開発・導入プロセスの知識体系化 ITコンサルタントへのヒアリング大阪府枚方市の災害対応システムの導入実験などを通じて、これまでに構築されている知識体系(REBOK、SWEBOK、SQuBOK、PMBOK、BABOK)で説明することが難しい導入工程の特徴を導出することができた。RAISBOKは、災害対応の情報システム構築に特別に設けられる項目と、既存の知識体系の取り扱い方により構成することが必要であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
(a)災害対応を支援する情報システムの開発・導入プロセスの分析においては、2019年度の分析に加えて、茨城県、大阪府枚方市のシステムの導入分析を行う。 (b)リスク対応型情報システム開発・導入プロセスの知識体系化においては、2019年度の調査結果を知識体系RAISBOKとしてまとめることを試みる。さらに、(a)で取り上げた情報システムの事例を、RAISBOKの視点で整理し、実践ガイドのプロトタイプを開発する。 (c)RAISBOKの適応実験(行政、社会福祉協議会、災害支援団体)においては、RAISBOKを、実際の災害対応のための情報システムの導入事例に適応することを試みる。適応事例として、リスク対応型情報システムの導入への期待が大きい行政、社会福祉協議会、災害支援団体を取り上げる。行政については、南海トラフ巨大地震で、最大の津波高が想定される高知県黒潮町が導入を検討している罹災証明システム、社会福祉協議会が運営を行う災害ボランティアセンターにおけるボランティアニーズ管理システム、災害支援団体については、JVOADが検討している中間支援組織支援システムを適用候補とする。これらのシステムは、申請者が開発に関わっているものであり、既に開発されているものもあるが、RAISBOKの観点から設計を見直し、必要に応じて改良を行う。さらに、災害時を想定した「運用リスク」のある活用実験を行い、評価データを取得する。また、近年の傾向から、研究期間中にこれらのシステムを活用される機会が来る可能性があることも考慮し、その際には積極的に活用することで、実活用における評価データの取得に努める。
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