2019 Fiscal Year Annual Research Report
軽元素を利用した新しい物質合成法の確立と希土類フリー磁石材料への展開
Project/Area Number |
19H05612
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐久間 昭正 東北大学, 工学研究科, 教授 (30361124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
飛世 正博 東北大学, 工学研究科, 学術研究員 (30766762)
土井 正晶 東北学院大学, 工学部, 教授 (10237167)
齊藤 伸 東北大学, 工学研究科, 教授 (50344700)
吉村 哲 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (40419429)
三浦 大介 東北大学, 工学研究科, 助教 (90708455)
福島 潤 東北大学, 工学研究科, 助教 (80634063)
小田 洋平 福島工業高等専門学校, 一般教科, 准教授 (80751875)
栂 裕太 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, NIMSポスドク研究員 (70641231)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | 永久磁石 / 希土類フリー / 第一原理計算 / ハード磁性材料 / レアアース / 窒化鉄 / Mn合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
希土類フリー磁石材料を、理論と実験の協業により創出する研究を開始した。 (1) 軽元素を利用した新しい物質合成法のメカニズム解明:Fe水酸化物の還元によるナノクラスター組織の形成過程および窒化物経由による炭化物形成過程を明らかにするために(Fe,M)OOHの還元条件をかえてFe-M合金 (M=none, Co, Ni, Mn等) を作製し窒化処理を行った。Nが結晶格子間に侵入するための必要条件としてFe-M合金の結晶子の大きさが関係していることが明らかになり、軽元素を結晶格子間に侵入させるための有用な指針を得ることができた。 (2) 新しい物質合成法の応用:希土類フリー系としてMn合金に着目しFe-Mn-Ga 薄膜を検討した。従来のD022型Mn3Ga系材料で高い磁気異方性Kuや高い保磁力Hcが確認されているが、フェリ磁性のため飽和磁化Bsが低いという課題があった。しかしながらFe-Mn-Ga系においてフェリ磁性からフェロ磁性への磁気相転移の観点から検討を行った結果、高いBs=1.1 Tと同時に高いKu>2.0 MJ/m3を得ることができ、希土類フリー磁石材料の候補として大きなポテンシャルを有していることがわかった。 (3) 理論計算による希土類フリー磁石材料の設計指針構築: 不規則度依存性を再現するスピンモデルの構築および,その物理的起源について考察を行った.その結果2-site間のスピンの積として発生する磁気異方性エネルギーが,そのボンド方向を磁化困難軸として取ると仮定することで,旧来の実験及び第一原理計算における不規則度依存性をスピンモデルにおいて再現することを見出した.加えて,ここで仮定したボンド方向依存の磁気異方性が実際に生じることを第一原理計算によって確認している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1) 軽元素を利用した新しい物質合成法のメカニズム解明:Nを侵入可能とする必要条件を求めるため、(Fe,M)OOHを還元して作製したFe-M合金(M=none, Co, Ni, Mn等) に窒化処理を行い(Fe,M)16N2の生成の有無を調べた。Fe-M合金の結晶子の大きさがN侵入の可否に関係しており、M元素の種類によらず50 nmを超えるとNは侵入できないことがわかった。評価技術として磁性微粒子の磁気力顕微鏡による高分解能観察技術を検討している。これには高Hcを維持しながらBs制御が可能な探針が必要であるが、CoCr系薄膜をSi探針母材に成膜することに成功し、約10 nmの高分解能を達成した。 (2) 新しい物質合成法の応用:Fe-Mn-Ga薄膜の実験からBs=1.1 TとKu>2.0 MJ/m3を同時に満足可能な組成および格子歪を見出した。この起源はRHEED解析の結果から、極薄領域(約3nm)での約2%の格子ミスフィットによる格子伸長歪導入による正方晶化に起因したL21型のフェリ磁性からフェロ磁性への磁気相転移によるものと推察している。酸・窒化物材料薄膜のスパッタリングでの形成に有用とされる反応性パルスDCスパッタリング法において、パルス幅(周波数)や電力と薄膜の結晶性との相関を検討した結果、スパッタ粒子が高いエネルギーで離散的に基板に到達する条件が、高品位薄膜の形成に有効であることがわかった。 (3) 理論計算による希土類フリー磁石材料の設計指針構築:本分担研究では窒化鉄Fe16N2における有限温度保磁力計算を行うにあたり,対応するスピンモデルの構築を進めている.また、理論パートで重要となる結晶磁気異方性エネルギーの評価手法に関する検討を重点的に行った。今回は局所的な磁気異方性定数を評価する手法を開発し、磁気異方性エネルギーがサイトによって大きく異なることを示した。これらについても予定通りの進展と判断している。 これらのことから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 軽元素を利用した新しい物質合成法のメカニズム解明:酸化物還元過程におけるナノクラナノクラスター組織の形成過程をより詳細に検討する。また窒化物経由による炭化物形成過程を、炭化の条件を変えてN侵入可能条件と関連させて追求する。さらに計画している水素反応炉を導入して、Hがナノクラスター組織の形成に与える影響について検討するとともに、新物質合成方法として活用することを目指す。 (2) 新しい物質合成法の応用:Fe-Mn-Ga単相エピタキシャル薄膜を作製し、高Bs化と格子歪導入によるさらなる高Ku化について検討する。また57Feエンリッチ超極薄薄膜を作製し、メスバウァー効果による超微細磁気構造解析を行い、高Bs・高Kuの起源を明らかにする。またバルク材についても高Bs化および高Ku化の可能性を追求する。 マイクロ波照射による酸化鉄原料の結晶子径の微細化の検討を開始する。 (3) 理論計算による希土類フリー磁石材料の設計指針構築:今後はFe16N2での窒素の規則度に応じたスピンモデルの構築をすすめ,その有限温度特性について検討を行う予定である.また、引き続き本課題の理論パートで重要となる結晶磁気異方性エネルギーの評価手法に関する検討を行う予定である。本課題において軽元素置換の効果を検証するに際して、軽元素に近接する鉄サイトと軽元素から離れた鉄サイトと磁気異方性を個別に評価することは重要であり、局所的な磁気異方性エネルギー的なものを評価する枠組みを確立する必要がある。
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Research Products
(17 results)