2019 Fiscal Year Annual Research Report
Efficient spin current generation based on coherent magnetoelastic strong coupling state
Project/Area Number |
19H05629
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大谷 義近 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (60245610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 直毅 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (30436539)
近藤 浩太 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (60640670)
Puebla Jorge 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (60753647)
一色 弘成 東京大学, 物性研究所, 助教 (80812635)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | スピン・回転結合 / 磁気回転結合 / スピン流 |
Outline of Annual Research Achievements |
素子作製及び電気的測定に関して、初年度は計画通り音響共振器の設計・作製に注力した研究を遂行した。散逸を抑えることにより信号を2倍に増強し、それに伴って生じる音響スピンポンピングにより生じるスピン電流が同様に増強されることを確認した。これまでの測定は室温で行われており、現時点でのエネルギー損失の主原因は熱フォノンと磁気緩和であると考えられる。 素子中の磁気ダイナミクスの光による測定については、GHz帯の信号発生器を導入、また現有のブリルアン散乱顕微鏡を落射配置に変更し、マイクロ波励起下のキャビティ構造においてマグノンが観測可能であることを確認した。 今年度は、音響強磁性共鳴やスピン流発生のさらなる向上が見込める低温測定を昨年購入したクライオスタットを用いて行う。そのために購入する磁場印加用の電磁石をクライオスタットに組み込み、低温音響磁気共鳴測定により、マグノン-フォノン結合の結合強度を精密に測定することで、強結合が実現する条件を決定する予定である。 本年度は、当該顕微鏡に分散測定の機能を付加するとともに、ヘリウム温度までの低温測定を可能とするクライオスタットを導入する。マグノン/フォノンの分散測定は、小径化した入射レーザー光を高開口数対物レンズの瞳位置で走査し、試料への入射角を制御すること、もしくは散乱光の特定立体角成分をアパーチャーにより選択するこ とにより実現する。それぞれ、空間分解能と波数分解能、また検出器位置での光量等にトレードオフの関係が存在するため、実際のデバイスを用いた最適化が必要となる。顕微光学クライオスタットには、広い開口、低振動、磁場印加、マイクロ波励起等の拡張機能が要求されるため、試料ホルダ周辺を特別仕様とした製作を行う。以上より、温度による擾乱を制御した環境において特定モードの強結合状態の観測を行い、キャビティ構造設計へのフィードバックを進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度は、磁性薄膜と複合化した表面弾性波素子の設計、作製、および透過・吸収 率評価を、音響共振器の有無の効果に着目して、GHz周波数帯で行った。その結果、音響強磁性共鳴吸収強度に約2倍の増強すること、さらに興味深いことに、室温で3倍にも及ぶスピン流増強が生じることを検証した。この成果は、プロジェクトの達成目標の1つあり、現在、実験結果を纏め、Appl. Phys. Letter誌に投稿したところである。この音響共振器の実験に加えて、音響強磁性共鳴と音響スピンポンピングの主な特徴について纏めた解説記事を発表した。その他、研究の予想以上の副産物として一軸磁気異方性を有する強磁性体と表面弾性波の磁気回転結合を通じて大きな非相反効果が得られることを発見した。 一方で、ブリルアン散乱法による、音響共振器中のフォノンとマグノンを、分散を含めて観測する実験系の構築を進めている。初年度は、現有の顕微鏡を落射配置に変更し、ブリルアン散乱光と試料顕微像の同時取得、また空間フィルターの導入によるレイリー散乱光の抑制を可能とした。加えて、ピエゾ駆動試料ステージ、横型電磁石、GHz帯信号発生器の組み込みを行った。これらを用い、マイクロ波励起下の共振器中においてマグノンが観測可能であることを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで、すべての実験は室温で行われており、フォノンエネルギー損失をさらに低減する要因を明らかにするためには、音響共振器を用いた音響強磁性共鳴測定の温度依存性を測定する必要がある。特に低温では、キャビティの性能指数(Q係数)の大幅な増加が期待できる。また、マグノン励起に伴うエネルギー損失が果たす役割をよりよく理解するために、異なる減衰係数を持つ磁性層を用いた実験も行う予定である。 また、ブリルアン散乱顕微鏡に分散測定の機能を付加するとともに、プランク分布を介した強結合状態の占有の観測を行うため、試料クライオスタットの導入を行う。分散測定は、小径化した励起レーザー光の試料入射角を制御すること、または散乱光の特定立体角成分を空間フィルターにより選択することによって実現する。顕微光学クライオスタットには、広い開口、低振動、磁場印加、マイクロ波励起等の拡張機能が要求されるため、試料ホルダ周辺を特別仕様とした製作を行う。 最終的には、上述の実験を通じてエネルギー損失とマグノン-フォノン結合の強さに関する詳細な情報を獲得することを目標として研究を遂行する。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Acousto-magnetic rectifier in anisotropic magnets,2019
Author(s)
X. Mingran, K. Yamamoto, J. Puebla, K. Baumgaertl, B. Rana, K. Miura, H. Takahashi, D. Grundler, S. Maekawa & Y. Otani,
Organizer
International workshop in Spintronics, Ollantaytambo, Peru, October 2019
Int'l Joint Research