2020 Fiscal Year Annual Research Report
Efficient spin current generation based on coherent magnetoelastic strong coupling state
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19H05629
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大谷 義近 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (60245610)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 直毅 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (30436539)
近藤 浩太 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (60640670)
Puebla Jorge 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 研究員 (60753647)
一色 弘成 東京大学, 物性研究所, 助教 (80812635)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | スピン・回転結合 / 磁気回転結合 / スピン流 |
Outline of Annual Research Achievements |
素子作製及び電気的測定に関して、計画通り音響共振器の設計・作製に注力した研究を遂行した。音響共振器を用いることで、電気的に励起したフォノンの散逸を抑え、フォノンの信号を2倍に増強し、それに伴って生じる音響スピンポンピングに由来のスピン流も同様に増強されることを確認した(Y. Hwang et al., Appl. Phys. Lett. 116, 252404-1~4 (2020).)。また、入力電力依存性の測定から、予想を超える大きな非線形スピン流生成現象も観測された。これ以外にも、研究プロジェクトの副産物として、強磁性体と表面弾性波の磁気回転結合を通じた大きな非相反効果の観測に成功し、論文出版(M. Xu et al., Sci. Adv. 6, 1724-1~4 (2020). K. Yamamoto et al., J. Phys. Soc. Jpn. 89, 113702 (2020).) および、このアイデアをもとに特許出願の準備を行った。これらの研究を通して、マグノン-フォノン結合に関する基礎的な知見の蓄積と測定素子構造の最適化を行った。 次年度は、フォノンエネルギー損失のさらなる低減および音響共振器の性能指数(Q係数)の増大を目指して、クライオスタットを用いた低温実験を行う予定である。また、マグノン-フォノンの強結合状態の観測を目指して、クライオスタットとブリルアン散乱顕微鏡を組み合わせた測定システムの構築を推進する。光学測定システムの評価には、実際の音響共振器と強磁性体からなる実デバイスでテスト測定を行い、光学測定の結果を、音響共振器の設計へフィードバックする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
強磁性薄膜と複合化した表面弾性波素子の設計、作製、および透過・吸収率評価を、音響共振器の有無の効果に着目して、GHz周波数帯で行った。その結果、音響強磁性共鳴吸収強度が約2倍増強すること、さらに、室温で3倍にも及ぶスピン流増強が生じることを明らかにした。この成果は、プロジェクトの達成目標の1つあり、Appl. Phys. Letter誌(Y. Hwang et al., Appl. Phys. Lett. 116, 252404-1~4 (2020).)に投稿し掲載された。さらに、興味深いことに、入力電力依存性に非線形なスピン流生成現象を観測した。これらの音響共振器の実験に加えて、マグノン-フォノン結合に関するCEMSトピカルオンライン研究会を開催し、研究内容の議論を行った。その他にも、副産物として、一軸磁気異方性を有する強磁性体と表面弾性波の磁気回転結合を通じて大きな非相反効果が得られることを発見し、その成果をScience advance誌 およびJ. Phys. Soc. Jpn. 誌(M. Xu et al., Sci. Adv. 6, 1724-1~4 (2020). K. Yamamoto et al., J. Phys. Soc. Jpn. 89, 113702 (2020).)に発表した。また、ニッケル(Ni)と鉄(Fe)の合金は、その組成比を制御することで、磁歪定数が、正から負へと大きく変えることができる。この特徴を利用し、非相反効果の制御および磁気回転結合によるマグノン励起に関する基本メカニズムの理解を進めた。この非相反現象は、フォノンを自在に制御する手法になることから応用への展開も考えられることから、特許出願を準備した。新年度早々に出願申請する予定である。以上のように多くの成果だけでなく副産物的成果も上がり、計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今回新たに観測されたスピン流生成の非線形効果について、起源解明のための追加実験および理論構築を行い、より高効率なスピン流生成機構の確立を目指す。また、これまでの実験は、すべて室温で行われており、フォノンエネルギー損失をさらに低減するためには、音響共振器を用いた音響強磁性共鳴測定の温度依存性を測定が必要である。特に低温では、音響共振器の性能指数(Q係数)の大幅な増加が期待できる。また、マグノン励起に伴うエネルギー損失が果たす役割をよりよく理解するために、磁性絶縁体なども含めた減衰係数が異なる磁性層を用いた実験も行う予定である。 また、ブリルアン散乱顕微鏡を用いた分散測定システムの構築を推進させる。具体的には、分散測定は、1) 小径化した励起レーザー光の試料入射角の制御 2)散乱光の特定立体角成分を空間フィルターによる選択によって実現する。最終的には、マグノン-フォノン結合の強さに関する詳細な情報を獲得することを目標として研究を遂行する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Strain-induced Megahertz Oscillation and Stable Velocity of an Antiferromagnetic Domain Wall2021
Author(s)
F. Chen, X. Ge, W. Luo, R. Xing, S. Liang, X. Yang, L. You, R. Xiong, Y. Otani, & Y. Zhang,
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Journal Title
Phys. Rev. Applied.
Volume: 15
Pages: 014030-1~8
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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