2020 Fiscal Year Annual Research Report
Pan-Arctic Water-Carbon Cycles
Project/Area Number |
19H05668
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
檜山 哲哉 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (30283451)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立花 義裕 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10276785)
佐藤 友徳 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (10512270)
朴 昊澤 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), グループリーダー代理 (10647663)
市井 和仁 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (50345865)
石川 守 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50373452)
植山 雅仁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60508373)
伊藤 昭彦 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 室長 (70344273)
飯島 慈裕 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (80392934)
小谷 亜由美 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80447242)
鈴木 和良 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), 主任研究員 (90344308)
水落 裕樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (20849963)
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Project Period (FY) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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Keywords | 地球温暖化 / 北極海氷縮小 / 大気-陸域水循環 / 永久凍土荒廃 / 温室効果気体 |
Outline of Annual Research Achievements |
4つの班が連携し、目的達成に向けた活動を継続した。陸域観測班は、北ユーラシアで過去に得られた熱・水・温室効果気体フラックス観測データの整備を進めるとともに、東シベリアの2つの観測拠点(Spasskaya Pad研究林とElgeeii研究林)で得られたフラックス観測データの品質チェックを行い、長期データセットを構築して温室効果気体フラックスの年々変動と季節変動の概要を論文にまとめた。陸域モデル班は、陸面過程モデルと水文モデルを結合した水循環統合モデルを用いて、環北極陸域から北極海に流れ出る河川水とそれに伴う熱フラックスが、北極海の海氷縮小にどの程度影響を与えるのかを世界で初めて定量的に明らかにした。大気班は水蒸気トレーサーモデルの改良を進め、大気再解析データを入力データとして利用できるようにし、1981年~2019年まで(39年間)の3時間毎の降水量と蒸発散量の全球プロダクトを作成した。また大気再解析データが採用している緯度経度直交座標系から、北極点の周辺のみ極を中心とするデカルト座標系を用いて水蒸気の移流計算を行い、従来の緯度経度直交座標を用いた環北極域の計算結果と滑らかに結合できるスキームを開発した。これにより、北極海で蒸発した水蒸気の輸送を高精度で追跡することが可能となった。統括班は低解像度で広域を観測するAMSR2と高解像度で観測するMODISのそれぞれの水指標画像をもとに、pix2pixの機械学習法によるデータフュージョン技術を適用して、レナ川中流域の湛水域マップの作成を開始した。これまでに、2012~2018年までの7年間における500m分解能で日別の湛水域マップが作成された。精度検証によって、既存の湛水域マップと整合性があること、そして春~夏にかけての融雪による湛水域の増加をよく表現できることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
陸域観測班は複数の衛星観測データを用いて二酸化炭素フラックスの広域化を試み、北ユーラシアにおける2000年~2020年(過去約20年間)の光合成量と純生態系交換量のデータセットを構築した。そして上述のように、東シベリアの2つの観測拠点における温室効果気体フラックスの年々変動と季節変動の概要を国際学術誌上で公表した。さらに、温暖化が永久凍土荒廃と地下氷融解に与える影響を検出するために、モンゴル中央部のハンガイ山脈に点在する湧水群のトリチウム濃度と溶存フロン類濃度を分析し、地下水年代を推定した。その結果、モンゴル中央部の降水量が今後減少した場合、地下氷融解水を起源とする湧水が近い将来枯渇してしまう可能性があることを国際学術誌に公表することができた。陸域モデル班は水循環統合モデルにトレーサーモデュールを加えることで、河川流出と蒸発散に対する融雪水・暖候期降水・地下水(または地下氷融解水)の成分分離とそれらの寄与率を定量的に評価できるように改良した。そして本研究課題の主要対象領域である東シベリアのレナ川流域に水循環統合モデルを適用し、各寄与率を定量評価することに成功した。大気班は北極域に適用可能な水蒸気トレーサーモデルの改良を完了し、北極海で蒸発した水蒸気の輸送を高精度で追跡可能な土台を構築することができた。統括班は2020年7月からPAWCs月例オンラインセミナーを開始し、新型コロナウイルスの蔓延により研究分担者間のコミュニケーションが途絶されがちな状況を打破し、研究の進捗状況を定期的に共有した。その結果、共著論文の国際学術誌への投稿と出版が進み、多数の論文の創出につながった。 以上のように、新型コロナウイルスの蔓延の影響で実施困難となった観測システムの輸送と現地観測以外の研究計画は、概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
陸域観測班は、北モンゴル・カラマツ林用の海外寒冷地向けフラックス観測システムの輸送を完了させる。新型コロナウイルスの蔓延の影響により東シベリア・カラマツ林用の海外寒冷地向けフラックス観測システムの輸送は実現していないが、既存のシステムを活用して現地観測データを取得する。そして統括班が創出する植生変化域時系列マップの基礎データとなる植生マップの構築を開始する。また、2020年の暖候期におけるシベリアの異常高温現象とその地表面への影響を解析する準備を行う。陸域モデル班は水循環統合モデルを用いてレナ川流域における水循環要素の起源を定量評価する。また、1980年代以降増加傾向にある冬季河川流出量の原因を探る研究を開始する。大気班は、北ユーラシアの河川流域を対象とした大気-陸域間の水循環経路の定量評価ができるよう、水蒸気トレーサーモデルの改良を行う。そして北ユーラシアの大気水蒸気量に占める北極海蒸発起源の水蒸気の割合とその挙動(水蒸気輸送の季節変化)を解析する。統括班は、植生変化域マップの作成についてもデータフュージョン技術を活用し、低解像度画像からの光学植生指数の予測が可能かどうかを検討する。また、合成開口レーダ後方散乱強度の変化から植生を含む地表面状態の変化検出手法を検討する。PAWCs月例オンラインセミナーを継続し、研究分担者間で研究の進捗状況を定期的に共有する。現地研究者とのコミュニケーションについても、新型コロナウイルスの蔓延状況を考慮し、国際シンポジウムをオンラインで開催する等、臨機応変に行う。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Groundwater age of spring discharges under changing permafrost conditions: the Khangai Mountains in central Mongolia2021
Author(s)
Hiyama, T., Dashtseren, A., Asai, K., Kanamori, H., Iijima, Y., Ishikawa, M.
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Journal Title
Environmental Research Letters
Volume: 16
Pages: 015008
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Lessons learned from more than a decade of greenhouse gas flux measurements at boreal forests in eastern Siberia and interior Alaska2021
Author(s)
Hiyama, T., Ueyama, M., Kotani, A., Iwata, H., Nakai, T., Okamura, M., Ohta, T., Harazono, Y., Petrov, R.E., Maximov, T.C.
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Journal Title
Polar Science
Volume: 27
Pages: 100607
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Increasing riverine heat influx triggers Arctic sea ice decline and oceanic and atmospheric warming2020
Author(s)
Park, H., Watanabe, E., Kim, Y., Polyakov, I., Oshima, K., Zhang, X., Kimball, S.J., Yang, D.
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Journal Title
Science Advances
Volume: 6
Pages: eabc4699
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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