2019 Fiscal Year Annual Research Report
Fc 受容体への親和性改変を指向した生体内抗体修飾反応の開発
Project/Area Number |
19J00396
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
六車 共平 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 抗体修飾 / 生体関連分子 / Fc受容体 / 金属触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内での抗体Fc部位の化学修飾による抗体機能制御を目的とし、生体適合性の高い金触媒とプロパルギルエステル(K. Tanaka et al. Angew. Chem. Int. Ed., 2017, 56, 3579)による抗体修飾反応を検討した。しかし、細胞表面やアルブミンの修飾について本反応の実施例があるものの、抗体修飾においては反応性が優れていないことが明らかとなった。また、計画書に記載している抗体結合ペプチドと金触媒の架橋体を合成し、同様に抗体修飾を試みたが、反応の進行を確認することはできなかった。そこで、遷移金属触媒反応をトリガーとして反応性の高い中間体を生成する反応基質を利用した新規反応を発案した。本反応に適用できる金属触媒は、生体内における利用例があり、生体内抗体修飾反応に利用可能であると考えられた。実際に、本金属触媒および反応基質を合成し、タンパク修飾反応を実施したところ抗体やアルブミンが修飾されていることをSDS-PAGEにて確認することができた。また、in vitroの細胞系において、蛍光団を有する反応基質を用いた同様の反応を行ったところ、触媒と反応基質の共処理群においてのみ、細胞表面が蛍光標識されていることを蛍光顕微鏡により確認した。本反応は、触媒毒となりうるグルタチオンの存在下においても進行しており、生体適合性の高い反応である。2019年度に得られた以上の結果は、生体内抗体修飾反応による抗体機能制御に繋がるものである。今後、抗体修飾による機能制御を実施する前に、所属研究室の独自技術である糖化アルブミンを用いた送達技術を利用し、本修飾反応の有用性を証明する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では金触媒を用いた抗体の修飾反応を実施する予定であったが、合成した触媒と基質を用いた抗体修飾反応は進行しなかった。しかしながら、用いる反応基質および金属触媒を変更することにより、抗体やアルブミンの修飾反応に成功した。本反応は生体適応性が高く、生体内の抗体修飾にも適応可能であると考えられる。このことから、2019年度は「おおむね順調に進展している。 」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、抗体を生体内で修飾することを目的としている。2019年度は金触媒を用いた抗体修飾反応を検討したが反応が進行しなかったため、他の金属触媒および反応基質を用いた修飾反応を実施し、抗体修飾が可能であることを示した。今後は、蛍光団など様々な機能性構造を有する反応基質を複数種合成し抗体修飾を実施する予定である。一方、本反応に利用する金属触媒と反応基質はin vitroでの抗体修飾に利用することができたが、生体内での抗体修飾に利用できるか定かではない。そこで、所属研究室において既に確立されている遷移金属触媒を標的部位へと送達する技術(糖鎖クラスター構造を有するアルブミン)を用い、生体内でのタンパク/細胞修飾反応を検討することで、本触媒的修飾反応が生体内に適用できることを示す。
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