2019 Fiscal Year Research-status Report
ネパール新出の仏教写本から見るネパール儀礼の基礎研究とその変遷
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19K00071
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Research Institution | Shuchiin University |
Principal Investigator |
SHAKYA Sudan 種智院大学, 人文学部, 教授(移行) (60447117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 朋子 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (80469204)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナーマサンギーティ / ネパール仏教 / 仏教写本 / 布薩 / ヴラタ / ホジソン / 仏伝 / 仏教教団 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、カトマンズ盆地で13世紀に書写された新出写本を中心として、①新出写本を整理・分析する文献研究と②ネパール仏教儀礼の基礎研究とその変遷を明らかにするものである。 本研究では、まず2019年度は、13世紀に書写された『ナーマサンギーティ』の新出写本について調査を行った。その結果、この梵文写本は全19葉から成る部分的な写本であることが判明した。この写本の奥書が残っており、それによれば、これはアリ・マッラ王の統治時代である西暦1211年にカトマンズで書写されたものであり、ランジャナー文字を使用し、紺紙に金泥で書かれている。この写本のローマ字転写版が完成しており、その内容も分析した。これには『ナーマサンギーティ』の第85偈から第167偈までの韻文とその後に続く散文に当たる「功徳品」が含まれており、現行の校訂テキストとの相違も認められている。次年度以降その分析を行う。また、分担者(岩田)は律文献に説かれる仏伝、およびその詳細を約120場面で描いた「釈迦牟尼世尊絵伝」との比較研究を行った。これはネパールにおける布薩・ヴラタ儀礼に用いる仏伝文献を分析する上で欠かせないものであると考える。 周知のごとく、ホジソンはネパール写本研究の先駆者であり、彼はアムリターナンダをネパール仏教の師と仰ぐ。研究代表者は2019年5月末にネパールを訪れた際、アムリターナンダの子孫が所有する写本、絵画など一部の所蔵を撮影し、その整理および分析を進めている。 2月下旬から3月上旬に予定していた、ネパールでの現地調査は新型コロナウイルス感染拡大のため延期せざるを得なかった。そのため、仏教徒が実践している儀礼(ヴラタ・布薩)や個人所蔵の写本調査も叶わなかった。その代わり、Viberを活用し、ネパールの現地協力者へ聴き取り調査を行い、儀礼の様子の写真および写本の一部を転送してもらった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献研究において、13世紀に書写された『ナーマサンギーティ』の新出写本の調査を行い、現状を確認することできた。完本でないことは残念であるが、現存する写本の状況は良好であるため、使用されている文字や材料の分析もできた。今回完成した同写本のローマ字転写版の内容分析も済んでいる。また、読みにおいては、既に発表されているサンスクリット校訂テキストとの相違も認められているため次年度からその分析を行う。これは今後作成する新しいサンスクリット校訂テキストにつながる。 一方、新型コロナウイルス感染拡大のため2月下旬から3月上旬に予定していたネパールでの現地調査は延期となったため、Viberを活用し、一部ではあるが新たな資料を入手することができた。 なお、ネパールの現地調査、特に儀礼関連の資料提供や内容解説に多大な貢献をしていただいた現地協力者Dilliraj Bajracharya師(Yoshodhara Mahavihara寺院所属の僧侶)が2019年5月30日に死去した。それに伴い、同寺院所属のAbhishek Bajracharya師から改めて協力をいただけるようになった。 また、分担者(岩田)は同じ京都市内にいる利点を活かし、定期的に研究会を開催し、収集した資料の分析、情報交換を行っている。これまでの研究成果は、研究代表者および分担者がそれぞれ学会、研究会などで発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き『ナーマサンギーティ』の新出写本の調査を行う。奥書に明記されている書写年(西暦1211年)の信憑性を裏付けるために、13世紀前後にランジャナー文字で書写されたアーサー・アーカイブス(Asha Archives カトマンズ)など別の所蔵写本の文字体系を比較していく。同時にサンスクリット語の正確性も分析する。書写年を確かめることで、現在調査中の写本は、現存する最古の『ナーマサンギーティ』であることを証明することができ、今後作成していく新たなサンクリット校訂テキストの底本とすることにつながる。 一方、現地調査において新型コロナ禍の感染状況を見極めて、分担者(岩田)と共にネパール入りし、現地協力者と相談しながら儀礼や個人所蔵の写本調査を実行していく。現地入りが叶わない場合、ViberやSkypeなどを駆使し、聴き取り調査や保有者からの資料の提供を要請する。収集した写本、絵画など諸資料の内容を分担研究者(岩田)と共に分析し、整理していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(82,102円)が生じた理由はネパールにおける現地調査が延期になったためである。
本研究の2年目は、前年度に延期となった仏教の儀礼および個人所蔵の写本に関するネパールでの現地調査を実施する。また、リモート研究会などに備えてマイク、スピーカー、ディスプレイなども完備する。そのため、次年度の研究費用を活用する。
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Research Products
(11 results)