2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K00092
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
斎藤 英喜 佛教大学, 歴史学部, 教授 (40269692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 奈津子 佛教大学, 総合研究所, 特別研究員 (50772555)
八木 透 佛教大学, 歴史学部, 教授 (70200475)
星 優也 佛教大学, 総合研究所, 特別研究員 (50850583)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神楽 / 祭文 / 中世神道 / 民俗信仰 / 民俗芸能 / 民間宗教者 |
Outline of Annual Research Achievements |
「神楽」の中世的展開とその変容というテーマによって、これまでの民間芸能という枠組みとは異なる「神楽」の姿を明らかにするのが本研究の目的である。 それを具体化するための計画にそって、本年度は、8/26、12/22の二回の研究会を開催し、第一回目では、「浄土神楽と法性神」「神道花再考」「変奏する岩戸神楽譚」「広島県の神楽が経験した近代 ― 政治・民俗学・国家神道 」「本地物語と祭文」をめぐる研究協力者の論文の検討をして、本研究の基礎固めを行った。第二回目の研究会では、研究協力者四名による研究報告と、討議を行った。その報告タイトルは、以下である。「「中世神楽」のメタヒストリー:研究史の現状整理と認識/叙述批判」、「神楽の歴史はどう描かれるべきか―里神楽をめぐる研究史の検討から―」、「大元神楽の再検証―邇摩郡井田村の大元神楽を事例として」、「いかにして寺院では神楽を奉納しなくなったのか―近世後期から明治初頭の武蔵国埼玉郡を舞台にして―」。 以上の報告と質疑によって、現在の神楽研究史の検討と、大元神楽、武蔵国の近世神楽の資料の解読が進められて、「神楽」の中世的な展開、その変容の相貌が具体的に明らかになった。 フィールドワークとしては、10月26日、27日に岡山県新見市土橋で行わた「長作荒神神楽」の調査、見学、1月4日、5日、6日に、愛知県「山内花祭」、長野県坂部「冬祭り」の調査・見学を行った。「長作荒神神楽」では、中世的な神楽団による荒神神楽の実態とともに、それが現在の地域のなかでどのように機能しているのかということ、「山内花祭」では、中絶した地域の祭祀が、専門宗教者である「花太夫」の家で復興しつつある、その実態を調査することができた。「冬祭り」では花祭りとの共通点と違いの現行の姿を調査することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況としては、予定した研究会のうち、二回まで行うことができた。その成果で、予定していた「「神楽」の中世的展開とその変容」にかんする研究史の検討、また資料解読による実態の解明は、おおむね果たすことができた。ただし「中世神楽」というときの方法論においては、いまだ実態と方法との関係をめぐって、議論すべき課題が残されているように思われる。 こうした検討課題にたいして、さらに中世の「祭文」の解読や中世・近世芸能史との関係などをめぐって、四月に第三回研究会を計画したが、新型コロナの影響で開催することができなかった。そのために、三回目で計画していた、中世神楽にかかわる「祭文」、とりわけ奥三河地域における祭文の解明、芸能とのかかわりなどの課題が残された。
フィールドワークについては、今回、ひじょうに貴重な岡山県新見市土橋の「長作荒神神楽」を見学、調査することができたのは、大きな成果である。とくに神社神職、神楽団、村の氏子集団による、それぞれの神楽のかかわり方の相違などが具体的に見ることができ、それは中世から近世にかけての神楽の展開、変容を探っていくうえで、重要な「情報」を得ることになった。これは、さらに近接した地域での荒神神楽の調査によって、研究を深める必要がある。 また山内地区の「花祭」は、花祭発祥の、もっとも古い形を伝えてきた地域でありながら、それが村の過疎化によって中断している状況のなかで、「花太夫」を継承してきた旧家を中心に復興されていることを調査できたのは、花祭研究においても重要な成果といえる。今後は、さらに花太夫家の人々との交流によって、過去の実態の調査をすすめたい。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては、11月、3月に研究会を計画している。前回開催できなかったために中断した、奥三河の祭文の解読、また中世・近世の芸能とのかかわりなどの考察をすすめたい。また研究協力者により、奥三河などの過去の神楽の映像記録を提供してもらえることになり、その映像を見ながら、現状との違いとともに、「中世」「近世」の神楽の様相、また広島、岡山、山口などの他の地域の神楽との共通点、違いなどについても、研究会の場で議論を進めていく予定である。 なお、新型コロナの影響によって対面での研究会が不可能場合は、オンラインでの開催も考えている。本研究テーマと密接にかかわり、研究代表をはじめ、多くの研究協力者も参加していた、2017年に名古屋大学で開催された「中世神道と神楽」のシンポジウムが活字化、刊行されたので、その「合評会」を開くことも予定している。それによって、「中世神楽」の実態と方法をめぐる議論をさらに深めることが可能となるだろう。 フィールドワークは、ひじょうに困難な状況が続くものと思われる。あらたに熊本県の神社に、中世後期、近世期の「吉田神道」の資料が所蔵されて、神楽と密接な神道護摩の実修が確認できたので、コロナの収束以降に、その調査を開始したいと思う。
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Causes of Carryover |
未使用金の発生は、予定していた研究会が、新型コロナの影響で開催できなかったこと、また予定していた熊本への調査ができなかったことが大きい。
2020年の秋以降に、第三回目の研究会を開催する計画、また熊本での調査も、現在調整中である。
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Research Products
(13 results)