2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00140
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
由井 恭子 大正大学, 基礎学力研究室, 専任講師 (90734509)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 中世楽書 / 體源鈔 / 豊原統秋 / 寺院芸能 |
Outline of Annual Research Achievements |
中世楽書研究は、テキストの精査、内容の検討、索引作成など、今後の研究がまたれる分野である。本研究では、楽書『體源鈔』を中心に、①楽書(『教訓抄』『続教訓抄』)から『體源鈔』に伝わっている内容、②『體源鈔』で新たに取り入れられた内容、③笙の家、豊原家に伝わる伝承、④寺院芸能の具体的な様子、⑤豊原統秋の法華信仰について明らかにすることを目的としている。 2019年度は初年度のため、これらの研究目的の達成に向けて、研究基盤を整えた。まず、楽書研究において、現在どのようなことが明らかになっており、今後どのような研究が必要かを精査した。研究の基盤を作るため、研究に必要な基礎的な書籍を購入し、写本などの複写を取り寄せた。また、研究協力者と、月に1回(全11回)、研究会を行い、『體源鈔』の内容、特に芸能関連事項や出典について検討した。また、研究代表者、研究協力者ともに、雅楽の楽器を習得し、楽譜の読み方や、雅楽、舞楽についての基礎的事項を学び、楽書の芸能関連事項の理解に努めた。 今年度は、「往生における音楽の役割-『古今著聞集』巻十五宿執、四九八話を中心に-」をまとめることができた。本論文では、楽書を紐解き、楽曲の「万秋楽」が、弥勒信仰と深く関わることを確認し、音楽を奏でることが仏教供養となっているのではないかと考察した。仏教と音楽について考察を深めるとともに、弥勒信仰の伝播や、院政期における弥勒信仰と阿弥陀信仰の人々の認識など、今後の研究課題を得ることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の基盤を整え、楽書に関する基礎的事項を確認することができた。特に、『體源鈔』の芸能関連事項や出典について検討することができた。これらは、次年度以降も引き続き、検討していく予定である。コロナウイルス感染拡大により、3月に予定していた調査に行くことができなかったが、2月までは順調に研究を進めることができており、1年目の研究計画は実施できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、引き続き、『體源鈔』の芸能関連事項や出典を分析していく予定である。また、昨年度取り寄せた写本(楽譜)の分析も進め、楽書と楽譜の関係についても考察していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大により、3月に予定していた調査に行くことができなかった。また、研究の初期段階で研究協力者への依頼方法を模索していた時期があり、予定より謝金の支払額が少なくなった。
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