2021 Fiscal Year Research-status Report
Ryutaro Hirota's creation of children's song and its context of cultural history
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19K00142
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
大地 宏子 中部大学, 現代教育学部, 准教授 (80413160)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 邦楽調査掛 / 日本伝統音楽 / 五線譜化 / 浄書 / 仏教音楽 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度におこなった調査は以下の二点である。第一に、明治40(1907)年に文部省によって設置された邦楽調査掛において、弘田龍太郎が調査員として取り組んだ事業について、その具体的な内容を明らかにした。邦楽調査掛の主たる事業は、日本伝統音楽のろう管録音と五線譜化で、邦楽の五線譜による採譜・記譜作業にあたった弘田の記譜作業の全容を明らかにしたうえで、彼がとりわけ尽力した再調査と浄書に注目し、その経緯ならびに弘田の浄書した楽曲の一覧を整理した。『東京芸大百年史』に記録された事業報告書や五線譜化作業の経緯を記録した『邦楽調査掛日誌』など複数の資料による調査の結果、弘田は雅楽をはじめ12種目の五線譜化に携わり80余曲の浄書譜を完成させたことがわかった。また、弘田が邦楽の五線譜化に強くこだわった背景には、普遍的言語として西洋音楽の五線譜に記すことによって日本伝統音楽の近代化をはかった邦楽調査掛の国威発揚的な政治風土があったことが浮き彫りとなった。 第二に、弘田と仏教音楽との接点として、彼が仏教音楽協会の顧問を務め新仏教音楽の担い手として仏教音楽界でも功績を残したことが確認された。なかでも注目されるのは東京帝国大学仏教青年会館に事務所をおくルンビニ―合唱団や、小石川の伝通院を拠点とするパドマ合唱団の指揮者として活動していたことで、両団を自身の仏教音楽作品発表の場として合唱曲等の発表を積極的におこなっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主たる研究課題であった邦楽調査掛における弘田の事業については概ね明らかにできた。舞踊家らとの交流についての調査は次年度に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に引き続き、東京帝国大学仏教青年会と弘田龍太郎との関連から彼の仏教作品を収集するとともに、花柳寿輔や石井漠ら交流のあった舞踊家との関わりとその作品群を整理する。また、ベルリン留学以後のラジオ放送への出演を通して啓蒙活動が活発になる時期に焦点を当て、弘田がラジオ放送でいかなる音楽教育をめざしたのか、また戦前から戦後にいたる時代毎の「子供の歌」をいかに変容させたのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
弘田のベルリン留学についての海外渡航調査を予定していたが、昨年度と同様に新型コロナウィルスによりそれが叶わず、出張旅費を消化できなかった。海外調査を延期(本課題の研究期間を延長)し、それが可能になった時点で使用する。
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