2021 Fiscal Year Research-status Report
移動、越境する大衆娯楽:中国における社交ダンスの受容と再生に関する文化史的研究
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19K00145
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
大濱 慶子 神戸学院大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (30708566)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 改革開放 / ペアダンス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度もコロナ禍の影響により国外での調査研究が実施できず、本研究の展開に影響がもたらされたが、前年度までに実施した研究を整理しつつ国内での資料調査に取り組み、以下のような成果をあげることができた。
1.資料の発掘と収集 中国の改革開放期における社交ダンスの復興、日中社交ダンスの交流の検証について、国立国会図書館などで資料調査を行い、80年代創刊された日本の社交ダンス雑誌の関連記事の収集に取り組んだ。 2.研究成果の公表 戦後冷戦期の社交ダンスの日中比較分析をまとめ、日本現代中国学会全国学術大会の企画分科会「余暇と娯楽のジェンダー論―身体・空間・メディア」において「戦後日中の社交ダンスの再生―「平等」の身体化」と題する報告を行った。またアジア遊学『中国の娯楽とジェンダー 女が変える/女が変わる』(中国ジェンダー研究会編、勉誠出版)の編集作業に携わり、研究代表者は「はじめに―中国の娯楽とジェンダーへの招待」と「戦後再生される社交ダンス―労働者の娯楽へ、<平等>の身体化の日中比較」の執筆を担当した。 3.研究集会の開催 上記アジア遊学の論文集出版記念学術交流会を2022年3月、須藤瑞代准教授(京都産業大学)が代表者を務める科研グループとの協賛で開催し(オンライン)、本科研からコメンテーターとして邵迎建氏(東洋文庫研究員)を招いた。多数の専門家の方々に報告とコメントをして頂き、多くの参加者を迎えて実りある学術交流が実現した。 中国の娯楽研究についての知見を深めるため、2021年12月、中国ジェンダー研究会と研究会メンバーの中山文教授(神戸学院大学)の協力の下、飯塚容教授(中央大学)を招いて「娯楽重視の上海話劇―『家』の来日公演から日本語版『家客』の上演まで」と題する講演会を開催した。講演会は対面で行われ、コロナ禍において研究者と直接討論し、意見交換の場をもてたことは貴重な成果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度(2021)予定していた研究課題は、前年度までに収集、分析した研究成果の公表を行うことに加えて、主に改革開放後の社交ダンスブームの再来と日中社交ダンスの交流について検討することであった。研究成果の公表は徐々に進み、国内の資料調査に着手することにより、日中間の交流について日本側の未発掘の史料を入手することができ、新たな研究の展望が開けた。
中国における資料調査に関しては、現地のダンス雑誌を取り寄せ、収集に努めているが、コロナ禍の影響による渡航制限から、今年度も現地調査を実施することができず、中国関連の資料の発掘が十分とはいえない。現地の研究者との情報交換や聞き取り調査などの課題も残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度十分に展開できなかった改革開放後の社交ダンスの復興と日中ダンス交流についての調査研究に継続して取り組み、中国の社交ダンスが大衆娯楽(「交誼舞」)から競技ダンス(「体育舞踏」)、舞踏学院の正規教育に取り入れられ、舞台芸術(「国標舞」)へと発展を遂げていく過程を明らかにする。新型コロナの状況により、長期にわたって渡航が困難となる場合に備え、現地調査の代わりとなるデータベースの入手やオンライン会議システムを活用した研究方法も同時に取り入れながら進めていく予定である。
近代から現代までの中国の社交ダンスの受容と再生、発展の歴史、日本との関わりについて整理し、全体を考察する作業を行う。 これらの分析結果を適宜論稿としてまとめ、学術誌に投稿し、学会などでも発表していく。また国内外の研究者とのネットワーク形成をめざして引き続き研究集会を開催し、研究成果の公表と発信、社会への還元に努める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、今年度も海外調査や現地資料収集が実施できなかったことや、ほとんどの学会や研究会、学術交流会がオンラインで開催されたことにより、国内外の旅費は未使用のままとなった。
生じた次年度の使用額については、本年度実施できなかった国内外の研究調査のための旅費や研究集会開催の経費、収集した文献資料の整理、研究成果の発信にあてる。また本研究課題に関連する新聞雑誌の購入、データベース作成費に有効的に使用する予定である。
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