2020 Fiscal Year Research-status Report
The Acceptance and Development of Art Informel in Japan
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19K00203
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
平井 章一 関西大学, 文学部, 教授 (30640255)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アンフォルメル / 抽象表現主義 / 具体美術協会 / 美術運動 / 戦後美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の中心的課題は「アンフォルメル」関係者への公開でのインタビュー(対談)や、海外での資料調査、インタビューであったが、新型コロナウィルスの感染拡大により対面での調査や渡航がかなわず、不可能になった。 感染拡大の勢いが鈍化した7月から3月にかけて、ようやく近隣に限り実地調査を行うことができた。まず7月19日に広島市現代美術館で「式場龍三郎:脳室反射鏡」展を調査した。式場はファン・ゴッホや山下清を研究し、彼らの作品の普及に努めた精神科医であるが、過剰な言説がアウトサイダー・アートや表現主義絵画の熱狂的な受容を巻き起こしていくプロセスは、日本でのいわゆる「アンフォルメル旋風」を考察するうえで非常に示唆的であった。11月14日には、ミシェル・タピエが評価していた日本人画家、鈴木崧氏の作品と彼のコレクションを所蔵・展示する「アンフォルメル中川村美術館」に赴き、鈴木氏旧蔵の非公開資料を特別に調査させていただいた。12月19日には兵庫県立美術館で、同館が所蔵する松本武氏旧蔵の資料を調査した。松本氏は、タピエが1950年代、60年代に収集し、その後長くイタリア、トリノで死蔵されていた日本人画家の作品を1980年代に発掘し、日本への買戻しを主導した画商である。ここでは松本氏がトリノで撮影したスライド写真から、旧タピエ・コレクションの全容を知ることができた。さらに3月17日、鳥取県立博物館で開催中の「生誕110年 岡本太郎-パリから東京へ」展を調査した。同展では、日本に初めてアンフォルメルの実作品が紹介された1956年の「世界・今日の美術展」が大きく扱われており、未見の資料や同館副館長の尾崎信一郎氏の教示から、多くの知見を得ることができた。 こうした実地調査のほか、アンフォルメルに関する文献収集や、日本人画家による「アンフォルメル」関連作品の所在調査も継続して行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨年度末に予定していたイタリア、ミラノでの資料調査と関係者へのインタビューに加え、今年度に予定していたフランス、パリでの同様の調査も、新型コロナウィルス感染の世界的な拡大と渡航禁止により不可能になった。 国内でのインタビューや資料・作品の調査も、2度に渡る緊急事態宣言の発令と出張の制限により、計画通りに進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、最終年度の総括としてシンポジウムと報告書を作成する計画であったが、総括以前の問題として、新型コロナウィルスの感染拡大の影響でいまだ多くの課題に取り組めずにおり、感染拡大の収束と当該国への渡航禁止解除の見通しが立たないため、次年度に遅れを取り戻すことができるか否かも確実ではない。 昨年度と同様、状況が改善し可能だと判断すれば、その時点でできうる限りの実地調査を行う予定であるが、次年度も状況に変化なく満足のいく成果が得られないようであれば、研究期間の延長を申請する可能性もある。
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Causes of Carryover |
昨年度と今年度に予定していた国内外での資料調査やインタビューが、新型コロナウィルス感染の拡大と移動制限により不可能になったため。これらについては次年度に昨年度、今年度計画分とあわせて実施することとする。
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Research Products
(1 results)