2021 Fiscal Year Research-status Report
吉岡デジタルアーカイブの構築とそれを活用した戦後日本の科学批判に関する研究
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19K00282
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
綾部 広則 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80313211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川野 祐二 下関市立大学, 経済学部, 教授 (30411747)
溝口 元 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (80174051)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 吉岡斉 / 科学批判 / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の課題は、従来の科学批判論者との比較考量に加えて、戦後日本の科学批判における吉岡の位置づけと、そうしたスタンスをなぜ吉岡がとらねばならなかったかについて、戦後日本の科学批判をとりまく社会的・政治的・経済的環境の変化と関連づけながら考察することであった。とりわけ本年度は、最終年度にあたることから、これまでに得られた成果を発表していく予定であったが、それは十分に実現できなかった。 第一の理由は、昨年度までに電子化した資料を精査することに予想外に時間を費やしたからであった。電子化した資料は、ほとんどがテキストを電子化したものであったが、100GBにのぼる膨大な量であった。しかも日時がはっきりしないものも多いため、時間軸に沿って整理するだけでかなりの時間を要するものである。こうしたことから、まとまった成果として最終的に公表できるような段階には至らなかった。とはいえ、この過程で、研究協力者より、資料の行間を埋めるべく関係者による回想録を作成してはどうかとの提案があり、その作業に着手できたことは一つの前進であった。 第二の理由は、個人情報の学術的利用に関する判断の問題が生じたからである。「補助事業期間中の研究実施計画」に記載のとおり、整理・保存した資料の中に含まれている個人情報に関わる内容については、学術利用の可否を文書ごとに個別に判断することにしていた。しかし資料を精査するうちに、やはりある程度の判断基準をあらかじめ作成しておく必要性に迫られた。そこでこの問題に詳しい専門家とも相談しながら判断基準を作成しようと試みたが思うように進まなかった。こうしたことから当初の予定に十分に達することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
膨大な資料の整理と分析、および資料の学術的利用に関する判断基準の作成に予想外に時間を費やしたため。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは資料の整理と分析を可能な限り早期に終わらせる。あわせて資料の学術的利用に関する判断基準の作成を行う。可能であれば、戦後日本の科学批判における吉岡の位置づけに関するまとまった成果を公表する予定であるが、まずは、2019年に報告した著作物から見た吉岡の特徴について、今回収集した資料からみて妥当であるか否か、また指摘されていない別の点があるかについて明らかにすることに注力したい。また本プロジェクトのスピンオフとして生まれた関係者による回想録の完成にこぎつけたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は、紙媒体の資料および図書が保存されている九大文書館に出向いて、実際の資料を参照しながら、研究分担者および研究協力者等と議論する予定であった旅費が、コロナの影響により使用できなかったためである。感染状況によるが、次年度使用額はこのために活用することにしたい。
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