2022 Fiscal Year Annual Research Report
吉岡デジタルアーカイブの構築とそれを活用した戦後日本の科学批判に関する研究
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19K00282
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
綾部 広則 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80313211)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川野 祐二 下関市立大学, 経済学部, 教授 (30411747)
溝口 元 立正大学, 社会福祉学部, 教授 (80174051)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 吉岡斉 / 科学批判 / デジタルアーカイブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の課題は、昨年度に積み残した課題である、従来の科学批判論者と比較考量しながら戦後日本の科学批判において吉岡はどう位置づけられるかについて明らかにすること、またそうしたスタンスをなぜ吉岡がとらねばならなかったかについて、戦後日本の科学批判をとりまく社会的・政治的・経済的環境の変化と関連づけながら考察することであったが、そうしたマクロな観点からの分析については、初年度に発表した研究代表者の論考を超える成果は得られなかった。他方、研究協力者より、提案のあった関係者による回想録の作成については大きな進展があった。当初は回想録としてまとめる予定であったが、吉岡本人の語りや、吉岡の仕事に対する現時点での評価を加味して『吉岡斉を語る/吉岡斉が語る』(花書院刊)として刊行できることになったからである(校正作業等に手間取ったため、実際の刊行は2023年度にずれ込むことになった)。マクロな観点からの分析は残されているが、ひとまず立体的に吉岡像を描くことができたと自負している。 一方、本年度はこれまで収集した資料の利活用という面で思わぬ進展があった。 ひとつは、アーカイブ研究者との交流が進んだことである。前述のように我々のねらいは、従来の科学批判論者と異なる吉岡の特徴を描き出すことにあったが、アーカイブ研究者からみれば、逝去してから間もない段階で関係者が資料をアーカイブ化すること自体に新鮮さがあったようである。こうしてアーカイブ研究者との交流が始まり、2023年5月には日本科学史学会の年会でアーカイブ研究者と共同でシンポジウムを開催することになった。 もうひとつは我々が収集した資料そのものに対してNHKから関心が寄せられたことである。これについては研究代表者が協力してドキュメンタリー番組(The Life「ある原子力学者の遺言~未公開資料が語る~」2023年3月10日放映)として結実した。
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