2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K00354
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
植田 麦 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (30511539)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本書紀 / 類聚国史 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、主として玉屋本・乾元本の校合に注力した。玉屋本は国立博物館所蔵の『日本書紀』写本で、三冊十巻で構成されている。報告者はこれまでも、玉屋本と系統を同じくする三嶋本についての調査を重ねてきたが、当該年度の研究はその延長線上にあるものである。 校合作業においては、玉屋本・乾元本の両者を一文字ずつ見比べて異同の確認を行い、集計ソフトを利用してそれを一点ずつデータ化した。その結果、ひとつずつの異同ではわからなかった巻ごと、また全体的な傾向を統計的に把握することが可能となった。現時点では、概略的な傾向を看取するのみであるが、2020年度内には論考としてまとめる予定である。 また、類聚国史諸本の研究については、端緒として、最古写本のひとつである石清水八幡宮蔵本の分析を始めた。これは、前田育徳会尊経閣文庫に写本が所蔵されているものの、現物はほぼ公開されてこなかったものである。特別の許可を得て、石清水八幡宮蔵本に閲することができた。現在、尊経閣文庫蔵本との点検作業を行っているところである。 これらの研究により、新たな課題が浮き彫りになった。玉屋本が巻第一・巻第二と巻第三以降では、異同傾向が異なるようにみえることである。本研究にかかる申請書類にも示したとおり、玉屋本巻第一・巻第二は『類聚国史』巻第一・巻第二の異本としての性質をもつ。そのため、玉屋本において巻第一・巻第二と巻第三以降とでは、その本文の傾向に差がみられることは想定の範囲内であった。今後は、この傾向がいかなる性質をもつのかに注視したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度末の時間を利用して、研究協力者の助力を得て研究を進め、文献調査などを行う予定であったが、新型コロナ禍により、それらの計画を実行することができなかった。また、同様の理由で予定外の公務が重なったため、研究を行うための時間をとることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
この新型コロナ禍がどのように・いつ収束をみせるのかによって、今後の研究をいかに推進するかは大きく変わってしまう。現時点では、1)夏までに収束した場合と2)夏以降に収束した場合の2パターンを想定してる。 1)夏までに収束した場合:夏期休業期間中に、本来であれば2019年度中に行う予定であったデータ整理と文献調査を行う。データ整理については、研究協力者の助力を得る予定である。あわせて、研究協力者である若手研究者の研究指導を行う。文献調査は、『中臣祓』諸本を中心に行いたい。玉屋本巻第五は、『日本書紀』本文に加え、『中臣祓』および祭文によって構成されるためである。 2)夏以降に収束した場合:これまでに調査をすすめたデータ整備を主として行うことになる。文献調査を行うことができないため、予算は次年度に繰り越さざるを得ない可能性がある。
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Causes of Carryover |
先述のとおり、本来は年度末に支出を予定していた研究が、コロナ禍によって行えなかったためである。また、これも先述のとおり、今年度も調査・研究が予定どおりにいかない可能性がある。ただし、この状況下において、可能な限り申請内容の研究を進めたい。
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