2020 Fiscal Year Research-status Report
富山大学付属図書館所蔵小泉八雲旧蔵書(ヘルン文庫)書き込み調査の推進
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19K00515
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中島 淑恵 富山大学, 学術研究部人文科学系, 教授 (20293277)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ラフカディオ・ハーン / 比較文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新型コロナウイルス蔓延により、当初予定していた海外(アメリカ合衆国およびフランス共和国その他)における資料収集や現地調査を断念せざるを得なかった。また、国外においても、申請者の勤務校以外では、貴重資料の閲覧を制限されていることが多く、結果的に勤務校附属図書館における研究資料を中心にした文献調査(これについても緊急事態宣言発令中における研究休止期間および図書館への立ち入りを制限された期間を除く)を行い、これまでに入手した研究資料の精査と集大成を行うにとどめた。また、今後も海外における現地調査や資料収集が容易に再開できない予測も含め、国内での現地調査や資料収集に研究の軸を変更する方向性について検討を行った。 ただし、これを機として、オンラインによる講演を複数回行い、国内外から聴衆を得たことで、研究成果の公開方法について、これまでよりも広範囲かつ効果的に世間に公開できる手段を入手できたことは望外の成果であるといえる。また、ハーンの生きた時代は、感染症が蔓延していた時代であり、特に日本で蔓延していたコレラについては、ハーンがまとまったエッセイを残して、日本人の心性の在り方を考察する拠り所としていることが明らかになり、これまでとは異なる角度から論考をまとめ、また、ハーンのそれらのエッセイを読むことで、今日同じく感染症に翻弄される我々が、ハーンから、あるいはハーンの生きた時代から何を学ぶことができるのかについて深く検討する機会となり、今後のハーン研究に進むべき方向について指針が得られた。 さらには、来日後にハーンが残した数多くの著作の精査と、小泉八雲旧蔵書(へるん文庫)の書き込み調査を継続することによって、ハーンが書き残している日本国内の事象についても、特に民俗学的な手法を援用して精査する必要があることが分かり、今後の研究の在り方について指針を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症蔓延により、当初予定していた海外(アメリカ合衆国およびフランス共和国その他)を中心とする海外における現地調査や文献調査が不可能となったため、研究計画の大幅な見直しを行わざるを得なかった。国内においても、緊急事態宣言発令中は研究活動の休止を余儀なくされ、また、県外移動が困難であった時期もあり、国内各地における現地調査や資料収集も順調に進めることはできず、これについても大幅な計画の見直しを行わざるを得なかった。 そこで、研究の主軸を、もともと継続して行っていた申請者の勤務校である富山大学附属図書館の小泉八雲旧蔵書(へるん文庫)の書き込み調査に絞り、また、ハーンの著作の精査についても、来日後の著作を中心に研究を行う方向に絞ったので、今後とも海外での現地調査や資料収集が難しい場合の研究活動の研究について、新たな方向性を得ることができた。 また、当初予定していた国内外の研究者を招聘しての国際シンポジウムの開催も断念せざるを得なかったが、これについても、申請者自身がオンラインでの講演を複数回行い、また、オンラインでの学会運営についても関与したことで、今後、オンラインでのシンポジウム開催の可能性などについて具体的に可能性を検討できる手ごたえを得ることができた。 さらに、ハーン来日後の著作について研究対象を絞ることによって、国内においても、民俗学的なアプローチと時代考証によってまだまだ解明されなければならない事象が数多くあることも確認され、今後のラフカディオ・ハーン研究のあり方について新たな指針が得られた。したがって、今年度1年間の研究活動の停滞は、今後の研究継続についての準備期間と前向きにとらえることができたという意味では、今後への展望が開けているという意味で、完全な停滞や取り返しのつかない研究の遅れではないと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
一つには、これまで推進してきた小泉八雲旧蔵書(へるん文庫)の書き込み調査をさらに進めるが、とりわけ、ハーン来日後の著作あるいは旧制第五高等学校及び東京帝国大学における講義録の内容との関連を中心に研究を進める方向に研究の軸を方向転換させる。 このことと関連して、ハーン来日後の足跡、あるいは著作との関連で、網羅的な現地調査や資料収集、民俗学的な手法による精査、綿密な時代考証の必要性を痛感したので、今後当面は、国内での現地調査、資料収集を中心に研究活動を行って行くこととしたい。 また、とりわけ海外から研究者を招聘しての国際シンポジウムの開催等は今後も困難であることが予測されるため、オンラインを活用した意見交換の場や研究成果の公開の方法も今後具体的に検討して行きたい。 また、申請者自身の研究成果の公開についても、今年度複数回のオンラインによる講演を行った成果を踏まえて、今後もオンラインによる成果発表を積極的に計画して行きたい。さらには、これまでに得られた成果を踏まえて、集大成を行い、単著として上梓することを具体的に計画している。
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Remarks |
いずれも、今年度申請者がオンラインで行った講演の一部を記録編集し、Youtubeで公開しているものである。
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Research Products
(7 results)