2020 Fiscal Year Research-status Report
日本語と朝鮮語の文法体系における動詞と名詞の位置づけに関する対照言語学的研究
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19K00575
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
塚本 秀樹 愛媛大学, 法文学部, 教授 (60207347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀江 薫 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70181526)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本語 / 朝鮮語/韓国語 / 動詞 / 名詞 / 対照言語学 / 複合格助詞 / 形式名詞 / 名詞修飾節 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の塚本は,次のことを明らかにした。 日本語における動詞が用いられた複合格助詞で,単一格助詞「に」及び「を」を伴うもののうち,これまでまだ取り上げていなかった「~につけて」「~に伴って」や「~をおいて」「~をめぐって」などと,それに対応する朝鮮語の表現について対照言語学からのアプローチで考察を行った。日本語で複合格助詞を用いて表現するところを,朝鮮語でも実質的な意味を保持していれば,直接対応する複合格助詞,あるいは意味的に間接に対応する別の複合格助詞を用いて表現することができる場合が多くなる。また,日本語で複合格助詞を用いて表現するところを,朝鮮語では実質的な意味を欠いていれば,同様に複合格助詞を用いて表現するのではなく,接続語尾,動詞連用形,単一格助詞,名詞などを用いるといった,複合格助詞とは別の方法で表現する場合が多く見られるようになる。 さらに,日本語における複合格助詞は,動詞が用いられたものと,名詞が用いられたものに二大別できるが,これまでまだ探究していなかった後者にも焦点を当て,「~のおかげで」「~のくせに」「~のせいで」「~のために」「~のついでに」などと,それに対応する朝鮮語の表現に関する考察に着手した。 研究分担者の堀江は,次のことを明らかにした。 日本語と朝鮮語における機能語化した名詞(形式名詞の「ふう(風)」/"sik",相対名詞の「向かい」/"macunphyen")に着目し,これらを主要部とする名詞修飾節について,機能拡張や語用論的推論の程度という観点から対照言語学的研究を行った。また,名詞の品詞性という問題を考察する中で,日本語と中国語における名詞のカテゴリー転換という現象にも研究の対象を広げた。これらの研究を通じ,日本語は,朝鮮語や中国語と比べて機能拡張,語用論的推論による補正,カテゴリー転換といった点でより融通性が高いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
入手した言語学関係の図書・論文によって,これまでに行われてきた理論的なアプローチからの考察を検討し,入手した日本語と朝鮮語に関する参考書によって,まずは記述されている範囲内でそれぞれの言語の事実を確認した。 また,研究代表者及び研究分担者の直感が効かない朝鮮語に関しては,それぞれの所属研究機関で母語話者に対して入念なインフォーマント調査を行い,従来の参考書には記述されていなかったり記述が詳しくなかったりする言語事実を明らかにした。 さらに,それによって得られたデータと情報については,研究代表者と研究分担者の間でその都度,連絡をとって提供し合い,検討するとともに,思索中の研究代表者及び研究分担者自身の考えについて意見交換を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の令和元年度,及び2年目の令和2年度における,本格的な考察を行うための基礎となるものを作り上げる作業((1)先行研究の検討,及び参考書に記述された言語事実の確認,(2)朝鮮語のインフォーマント調査による言語事実の解明)を継続して行う。 そういったことにより,次のことを行う。動詞と名詞が日本語と朝鮮語それぞれにおいてどのようにかかわり合っており,また動詞と名詞が日本語と朝鮮語それぞれの文法体系全体においてどのように位置づけられるのか,ということについて対照言語学からのアプローチで探究する。 また,研究代表者及び研究分担者それぞれによって得られたデータと情報について検討するとともに,思索中の研究代表者及び研究分担者自身の考えについて意見交換を行う。 さらに,思索中の研究代表者及び研究分担者自身の考えについて国内外の他の研究者と議論し,また助言を仰ぐ。 なお,上記の研究活動は当初,出張によるものとしていたが,新型コロナ禍の影響により,それが困難な場合は,Zoom 等を利用した遠隔形式で実施する。
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Causes of Carryover |
昨年度(令和元年度)及び今年度(令和2年度)よりも次年度(令和3年度)の方が全体の予算額を少なく見積もっていたが,次年度(令和3年度)には,基礎データとなる日本語と朝鮮語の実例をさらに収集し,それを整理する有能な研究補助者,並びに研究代表者及び研究分担者の直感が効かない朝鮮語についてさらなる入念な調査を行うためのインフォーマントに対して十分な謝金が必要であり,それを補充する目的でこのような措置をとることにした。
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