2020 Fiscal Year Research-status Report
日本語母語話者の韓国語運用を阻害する漢語動詞のヴォイスの類型化と理論化の試み
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19K00775
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
尹 亭仁 神奈川大学, 国際日本学部, 教授 (70409879)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 韓国語 / 漢語動詞 / ヴォイス / 使役形 / 受身形 / 新聞の社説 / 全数調査 / 演繹的アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の目標は、「韓国語重要漢語動詞2000」に準拠し「中央日報社説2016-20」を対象に漢語動詞の「使役形」と3つの「受身形」の全数調査を行ない、それぞれのVNを分類・整理することである。社説5年分のデータを整理し、「2字漢語使役形」のVN-sikidaの頻度調査を行ない、延べ語数1,639語、異なり語数233語が得られた。VN-hadaの1/6~1/7の使用状況であった。VN-sikidaの使用状況が低いことはすでに尹亭仁(2019)で指摘し、予想していたことであるが、使用頻度の低さと使用語彙の偏りが特徴として浮き彫りになった。また、2016年の社説では455語、2017年では398語、2018年では300語、2019年では251語、2020年では235語が得られ、年々使用語彙が少なくなっている傾向が問題点として浮上してきた。2011~2020年までの10年間の変遷を知るために整理した5年分(2011-15)を対象に追加調査を行ない、この傾向の真相を確かめることにした。 またVN-sikidaの場合、漢語VN以外に、固有語(韓国の和語)+sikida、外来語(リンク、アップグレードなど)+sikidaの用法も見られ、VN-sikidaの全体の記述の際に参考になる。 語彙調査とそれの活用に「学習者視点」を取り入れ、中級以上の授業で「朝日新聞社説2019」の調査で得られた2字漢語動詞1,273語を提示し、学習者の反応を確かめた。韓国語からの提示より効果が高いことが分かった。韓国語からの提示だけでなく、「朝日新聞社説2020」の調査で得られた1,228語を加え、異なり語数1,637語を以て日本語からも提示できる準備ができている。 『デイリー日韓英辞典[カジュアル版]』(2017)の語彙調査から得られた2字漢語動詞1,278語についても活用の準備ができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「中央日報社説2016-20」の年度別、月別のデータ(60か月分)が整理でき、使役形の「VN-sikida」の検索、分類、整理はできている。受身形の「VN-badda」「VN-danghada」「VN-doida」は作業中である。特に「VN-doida」には受身形か可能形か、判断に迷うものも多いため、予想以上に時間がかかっている。 当初アルバイトの依頼を予定していた韓国からの留学生が新型コロナウイルスのため、入国できない事態を受け、研究代表者1人で分類・検索データの入力などを行うには分量的に限界がある。 さらに、本学のキャンパス移転に伴い、2021年1月~3月まで研究室の引越しの準備、梱包、開梱にも予想以上の時間がかかってしまった。今も授業と業務の合間をぬってデータの整理作業を続けている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、「中央日報社説2016-20」での使用語彙の偏りを補うために『李箱文学賞作品集1986-2015』の短編小説約265本(30年分)を対象に漢語ヴォイス表現の全数調査を行なう。30年間のデータはほぼ整理できているため、「中央日報社説2016-20」の作業と同時に進める予定である。特に、「中央日報社説2016-20」の調査で明らかになったVN-sikidaの減少傾向を30年間の通時的考察から確かめたい。 現在、日韓両言語ともに「韓日漢語動詞7000」と「日韓漢語動詞7000」の資料集ができている(それぞれ訳語付き)。これに、「中央日報社説2016-20」と『李箱文学賞作品集1986-2015』の調査結果に基づいてヴォイスへの派生情報を加えていく計画である。
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Causes of Carryover |
資料収集および意見交換のために計画をしていた韓国出張ができなかったためである。 新型コロナウイルスの状況を注視しながら2021年度の後期に出張するか、国内の他大学の研究者を訪ねるか決めたい。韓国で出版された新刊図書や資料集の入手が困難であるため、困った状況にいる。
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