2019 Fiscal Year Research-status Report
第二言語学習者の屈折形態素習得と母語にない形式素性との関連性研究
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19K00883
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Research Institution | Miyagi University |
Principal Investigator |
栗田 さつき (小島さつき) 宮城大学, 基盤教育群, 准教授 (30713276)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第二言語習得 / 屈折形態素習得 / 英語学習者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、第二言語学習者の屈折形態素習得の問題に対して、上級レベルに達した英語学習者の母語に存在する、またはしない形式素性の習得に関して体系的に研究を行うことにより、その問題の原因解明に貢献することを目的としている。2019年度は、第二言語学習者の屈折形態素習得の研究を対象とした文献調査、および本研究のリサーチデザインの再構築を行った。具体的な成果は以下の3点である。
1.英語が上級レベルに達したいくつかの言語の母語話者は、過去形の形態素習得が概ね可能であるが、中国語母語話者にとっては、困難である。また、三単現のsに関しても、英語が上級レベルのいくつかの言語の母語話者は、習得が概ね可能であるのにもかかわらず、中国語母語話者に関しては、はっきりしていない。さらに主語の顕在化に関しては、概ね、主語省略可能な言語であっても、問題がない。そのため、中国母語話者とその他の言語の母語話者を比較する必要があり、本研究のリサーチデザインの妥当性を再確認することができた。 2.三単現のsに関しては、オフラインのデータに関しては、概ね上級レベルに達すると習得が可能であるが、オンラインのデータに関しては、問題がありそうなことが分かった。そのため本研究によるオンラインでのデータ調査の有益性を確認できた。 3.中国語には動詞の屈折はないが、人称と数に関しては、日本語と似た、及び変らない形態をとっている。そのため、第二言語学習者の屈折形態素習得の困難性に関しては、屈折形態素に関して違いのある日本語と中国語を比較することにより、日本語母語話者の母語には存在するが、中国語母語話者の母語には存在しない形式素性を比較することができるため、母語の形式素性の有無が、屈折形態素習得の困難性に関与している可能性を探ることができることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献調査の結果、それぞれの言語の特徴と先行研究の調査結果から、屈折形態素のない中国語母語話者と屈折形態素のある日本語母語話者の英語発話データを研究することの必要性が明らかになったため、リサーチデザインの妥当性を確認することができ、今後の見通しがついたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度には、文献調査とリサーチデザインの再構築を行った。2020年度は、データ収集のための準備を完了させ、研究調査への参加者を募集し、年度内に参加者からデータをとる。2021年度に、それらのデータを精査し、その研究成果を学会で発表し、研究者との意見交換をするための準備をすることを目標とする。しかしながら、新型コロナウイルスの影響で、実験参加者からの直接の発話データ収集が困難となる可能性があるため、この点に関しては、遠隔会議システムなどを利用し進めていくなど、今後さらに検討を進める。
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Research Products
(1 results)