2021 Fiscal Year Research-status Report
都市の選択:15世紀スイスの地域の権力構造とハプスブルク家の影響力
Project/Area Number |
19K01075
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
田中 俊之 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (00303248)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スイス盟約者団 / ハプスブルク家 / 永久同盟 / 原初三邦 / 体僕 / バーゼル |
Outline of Annual Research Achievements |
中世ヨーロッパにおける国家形成のあり方を問題にする際、スイスは盟約者団国家としての独自性を対ハプスブルク闘争史観に基づいて強調するのが常套手段であり、スイス人研究者もスイス人以外の欧米の研究者も、そして日本人研究者も大方がそうした傾向に今なお依っていると言ってよい。しかし一部にはそうした動向を相対化し、対ハプスブルク闘争史観からの脱却によってこれまでのスイス史像を根拠づけてきた事象を見直そうとする動きが見られ、本研究も目的を同じくして新しいスイス史像の構築をめざしている。新型コロナ感染蔓延により今年度もまた海外渡航がかなわなかったため、新しい史料との遭遇はかなわず、本来の題目「都市の選択」からテーマを少し移行して取り組まざるをえなかったが、今まで収集した史料を再検討することにより、おもに3つの成果を得た。 第1に、スイス史が最も重要視する1291年の永久同盟に関して故ロジェ・サブロニエが提示した新説をふまえ、そこにハプスブルク家は敵対者として関与していたのか、誰が盟約者だっかのかを整理して論文にまとめて公表した。 第2に、1315年のモルガルテンの戦いでハプスブルク家と初めて武力衝突して勝利した「原初三邦」であったが、その1ヶ月後に1291年の永久同盟を更新したとされるモルガルテン同盟について、同盟の内容および図像資料を精査することにより、実際には誰が、またなぜハプスブルク家と武力衝突したのかを考察し、その成果を講演として発表した。 第3に、15世紀後半のハプスブルク家封臣ハンス・ベルンハルト・フォン・エプティンゲンがその体僕の処遇をめぐって都市バーゼルと争った際の「往復書簡」を再検討することにより、本研究の中心テーマ「都市の選択」で期待された地域の権力関係の把握に関する大きなヒントを得ることに成功し、まだ1つの見通しとしてではあるが、論文にまとめてそれを指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中心テーマ「都市の選択」で想定したのはハプスブルク都市ラインフェルデンとそれを取り巻く地域の権力関係の把握であったが、海外渡航制限もあって思うような史料調査ができず、本来の目的が達成できなかった点は否めない。しかしながら、当初の中心テーマからテーマを少し移行させることにより、スイス史研究の意味をより強く認識することができ、論文と講演を成果としえたし、ラインフェルデンとは無関係と思われる別の史料の偶然の再検討の結果、中心テーマで期待した地域の権力関係の把握に接近できる要素を発見できたため、研究の遅れを十分に挽回できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた成果に基づいて、1)盟約者形成の初期段階(1291年、1315年、あるいはその周辺)におけるスイス中央山岳地域の実態を追求すること、2)スイス北西部における権力関係を、スイス北西部のハプスブルク系貴族が自身の裁判権をめぐって誰を有力な「隣人」と認識していたかを通じて把握すること、この2点の分析・考察を進めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染蔓延による海外渡航制限、および日本国内における学会、研究会のオンライン化により、海外渡航費、国内旅行費のすべてを使用するめどが立たなくなった。次年度も海外渡航を見送らざるを得ない場合には、大型史料(絵入り年代記等)の購入に充てるなど、文献研究を中心に研究の深化をめざしたい。
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Remarks |
田中俊之「スイス史再考―14世紀のはじめ―」(金沢大学公開講座、2021年10月2日、金沢大学サテライト・プラザ)
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Research Products
(2 results)