2020 Fiscal Year Research-status Report
Early State Formation and Climate Change in Ancient Mesoamerica
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19K01108
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
福原 弘識 埼玉大学, 教育機構, 非常勤講師 (10725956)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 初期国家 / 環境変動 / 火山噴火 / メソアメリカ / 考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、従来のメキシコ古代史研究に対し、新たに火山噴火を始めとする環境変動資料を通詞的データとして提供し、古代メソアメリカ文明における初期国家形成史を解明することを課題としている。 研究実施計画に則り、2019年度はメキシコ合衆国プエブラ州のチャウトラ湖においてボーリング調査を実施し、土壌コアを湖底から採取した。この土壌コアの観察とレントゲン写真撮影後に分析用試料を取り出し、古気候復元のための鉱物分析を米延仁志氏(鳴門教育大学)、湖沼環境復元のための珪藻分析を鹿島薫氏(九州大学)、火山灰同定を檀原徹(株式会社京都フィッション・トラック)の下でそれぞれ実施した。また、トラランカレカ遺跡における人口増と都市の拡大過程を解明するための層位的発掘調査の準備作業の一環として、2020年度調査予定地に隣接し、2016年と2018年に既に実施したトラランカレカ遺跡北東部の住居址区域における層位的発掘調査の出土遺物分析をおこなった。2020年度から2021年度にかけては上述の土壌サンプルから取り出した植物遺存体と炭化物による放射性炭素年代測定を大森貴之氏(東京大学)の下で実施中である。 ボーリング調査および土壌サンプル分析の結果、火山噴火による降灰を含む層位及び、ラハールによる再堆積の可能性のある層位を含有していること、珪藻の種類とその増減から湖沼環境の形成と変化が明らかになり、火山活動と湖沼環境の変化に関連性がみられるという成果が得られた。また、トラランカレカ遺跡出土遺物の分析により、トラランカレカ遺跡北東部の調査対象区域では一般住居区域が従来の都市を拡張する形で営まれていたという従来説を再確認することができた。なお、研究成果の一部は学会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の実施計画は、研究目的を達成するための検討課題として挙げたポポカテペトル火山のプリニー式噴火の年代特定と火山噴火に起因する長期的な環境変化を、トラランカレカ遺跡に隣接するチャウトラ湖の湖底ボーリング調査およびトラランカレカ遺跡の層位的発掘調査を通じて明らかにし、メキシコ中央高原地域における初期国家形成前後の社会変化を環境変動と結びつけながら解明するものである。このうちチャウトラ湖のボーリング調査と分析用試料の採取および試料の分析は、概ね実施計画に則り進行し有益な情報を収集することができている。 しかしながら、2019年度春季に計画していたトラランカレカ遺跡におけるトータルステーションを用いた測量調査は、COVID-19の世界的蔓延以前に渡墨していたものの、現地調査員の協力を必要とする調査であり、当時はCOVID-19 に対する対策方法が不明瞭であったため現地社会にも不安が広まっており調査実施をとりやめ、以前実施した発掘調査の出土遺物分析を実施した。また2020年度計画の現地調査は、海外渡航が困難であったため実施することができず、1年間分の調査研究が遅滞した形となった。
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Strategy for Future Research Activity |
放射性炭素年代測定の分析結果及び花粉分析が未実施であるものの、2019年度の調査研究によって通時的な環境変動に関する現時点で必要な資料は収集することができた。当初、2020年度は現地での層位的発掘調査、出土遺物整理、放射性炭素年代測定、出土遺物の分析を実施予定であったが、COVID-19の流行により研究は停滞した。2021年度は2020年度実施予定であった現地調査をあらためて実施し、そのうえで補助事業期間延長申請をおこない、2022年度までに本研究成果をまとめ上げる予定である。本研究の一方の核となる環境変動分析用試料は既に採取できているため、現地でのフィールドワークが困難な場合も古環境復元の考察は可能である。そのため、本研究の総括に向けてこれらの調査成果と既存の調査研究成果の総合的考察を推進していきたい。調査研究で得られた成果の一部については既に学会等で発表しているが、その多くはいまだ未発表である。今後は、本研究の総括的検討を進めながら、未発表の成果を積極的に学会発表や学術論文として公開していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、2019年よりCOVID-19が世界的に流行し、メキシコへの渡航および現地調査ができなかったためである。 いまだCOVID-19に対する情勢は不明瞭であるものの、2020年度の計画を実施し、今後は本研究の総括に向けて総合的な検討を進め、その研究成果を国内外の学会等で発表、論考にまとめていきたい。
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Research Products
(5 results)