2019 Fiscal Year Research-status Report
プロセスベースの河川侵食速度の解明:地形ダイナミクスの階層構造の理解に向けて
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19K01157
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
遠藤 徳孝 金沢大学, 地球社会基盤学系, 准教授 (60314358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷口 圭輔 福島県環境創造センター, 研究部, 主任研究員 (80774794)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 河川地形 / 岩盤河川 / 岩盤侵食 / モデル実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
異なるタイプの隆起に対する河川の応答を議論するために、流域発達モデル(アナログ実験)を行った。隆起様式は、一度だけ隆起を与える場合(一回隆起)、一様かつ時間的に連続に隆起を与える場合(一様連続隆起)、上流側の隆起速度が速い場合(山側優勢傾動隆起)の3つ。隆起作用に対する地形応答と下刻速度の時間変化の関係について考察した。観測された地形変化の時系列データを用いて、2変数に対する1関数値の最小二乗法で算出されたStream power model(SPM)の冪指数mとnの値は、不規則に時間変化する結果が示された。SPMの冪指数値は、ある流域の地形変化に対して一意的に定まるという従来の考え方とは異なる結果となった。得られたSPMの冪指数(および係数)を用いた下刻速度の理論値と実測値との乖離の程度を評価し、乖離度からSPMの成立状況と地形の発達段階との関係について考察した。隆起優勢の地形発達段階初期において下刻速度はSPMによく従う一方で、侵食優勢の地形発達終盤段階では下刻速度はSPMから乖離した値をとることが示唆された。 流路スケールの実験では、硬度が異なる2種類の基盤を用い、蛇行度と河床勾配を測定したところ、全体的な傾向としては、負の相関があることを確認した。これは、野外河川の観察報告Frasson et al (2019)およびLazarus and Constantine (2013)と調和的である。 河床スケールの実験として、岩盤がブロック状に剥離するタイプの侵食モデル実験の手法開発を試み、ある一定の方法を確立した。予備実験を行ったところ、プラッキングにおいても、アブレージョン同様、カバー効果が生じうることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流域スケールの実験では、stream power model(SPM)の冪指数値に関してある一定の結論を得るに足りる実験データを得ることができた。河床スケールの実験に関しては、岩盤ブロック剥離型の岩盤侵食についてのモデル実験は先行研究が非常に少なく、実験方法から模索する必要があったが、ある程度めどが立った。流路スケールの実験では、もう少しデータの蓄積が必要だが、上流からの堆積物の供給がない場合について、流路形状変化の傾向がある程度つかめた。また、今後行う予定の、堆積物供給がある場合の実験に必要な装置の設計はすでに済んでおり、プロトタイプの作成が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
一つの流域内でのテクトニクスに応答した水系網の漸移的変調とは別に、2つの流域間の相互作用、すなわち分水界の移動についても検討していく。そのために、モデル実験用の装置(水槽)を改良する。隆起装置は従来のものを流用し、排水の方法を変更する。流路スケールの実験については、堆積物の供給の影響を考察する実験条件を設定する。河床スケールの実験では、基礎データの精密化を目指す。
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Causes of Carryover |
現存の実験水槽を改良する予定にしていたが、継続中だった実験の期間を延長する必要があったため、装置の改良を次年度に延期したことが主な理由。改良のための設計や部材の選定は済んでおり、すぐに改良に着手する予定。
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