2019 Fiscal Year Research-status Report
19世紀における地図製作者の系譜と作図法の継承・革新
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19K01167
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
小野寺 淳 茨城大学, 教育学部, 教授 (90204263)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 19世紀 / 地図 / 酒井捨彦 / 宗孟寛 / 北本栗 / 石黒信基 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代の地図と明治以降の地図を連続してとらえ直す視点による研究が重要な課題となっている。この視点による一つのアプローチとして、江戸時代の作図法(技法)を用いていた地図製作者が、地形図の作図が導入される中で、明治時代にも地図を製作した場合、その作図法がどのように継承され、あるいはどのように革新を受け入れたかを明らかにすることができるのではないかと考えられる。 本研究では、青年期に江戸時代の作図法を学び、明治期にも地図製作を行った民間地図製作者を複数取り上げ、製作した地図表現の比較、文書などによって経歴と師弟関係などの系譜を明らかにすることを目的とする。具体的には、幕末における水戸藩の地図製作者酒井喜熙の息子である宗孟寛・酒井捨彦・酒井彪三、北陸の伊能忠敬と称される石黒信由の孫北本栗の4人を取り上げ、彼らとの血縁・子弟関係から酒井喜熙、酒井喜雄、伊能忠敬、石黒信由、石黒信基、伊能忠敬などを研究対象とする。 本年度は計画通り、①茨城県立歴史館に寄贈された酒井家文書の調査、ならびに酒井喜雄の子孫宅(東京都)など関係する子孫宅所蔵資料の調査を実施した。②酒井家と交流があった鶴峯戊申は、大分県臼杵市八坂神社の神官として生まれた。臼杵市立図書館などで関連資料の収集を行った。③奈良県立図書情報館、広島県立歴史博物館で、地図の収集を行った。広島県立歴史博物館で国絵図研究会第45回秋季大会で鶴峯戊申作成地図の報告を行った。 ④酒井捨彦の兄宗孟寛は大阪に転居し、「郡区改正 大和一円実測図」などを作製した。弟彪三も大阪で地図製作を続けた。二人とも大阪で活動しており、両者の子孫宅の動向を調べているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①本研究の地図製作者のうち、酒井捨彦とその兄弟の宗孟寛、酒井彪三の子孫宅を探し、関連する資料を収集ため、3名が横山大観の父と叔父であることから、横山大観記念館を訪ねた。大観の孫にあたる館長に伺ったところ、大観は叔父たちの子孫との書簡が届いたとしても、書簡を保管することがなく、子孫との交流は無かったことがわかった。コロナウィルス感染症の状況をみて、2020年度も継続調査を実施したい。 ②一方、奈良県立図書情報館、ならびに広島県立歴史博物館では鶴峯戊申、酒井捨彦、宗孟寛、酒井彪三作製地図の撮影を行った。なお、酒井喜雄旧蔵資料は寄贈先の茨城県立歴史館で調査した。 ②臼杵市立図書館での鶴峯戊申関連の文献を収集し、臼杵市歴史資料館の鶴峯家所蔵目録に関する問い合わせを行った。歴史地理学会大会(大分市)に合わせて、臼杵市で資料収集を実施した。しかし不十分なため、コロナウィルス感染症の状況をみて、2020年度に補充調査を行いたい。 ③2020年度調査予定であった石黒信基、北本栗が作製した地図ならびに関連文書を射水市新湊博物館で撮影・収集を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
①神戸市立博物館での資料収集と大阪市内での子孫宅調査 ②コロナウィルス感染症により、当初報告予定であった2020年3月から8月までの歴史地理学会大会や日本地図学会大会は中止または順延となったため、研究成果の報告ができなかった。コロナウィルス感染症の今後の状況をみて、遅くとも2021年7月末に予定されている歴史地理学会大会(於:沖縄国際大学)では研究成果の報告をしたい。また、研究のまとめをしつつ、学会での研究成果を報告し、学会誌等で公表する予定である。
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Causes of Carryover |
物品のうち、購入予定であった大型三脚が販売停止のため、購入しなかった。当初予定よりも短期間で地図資料の収集ができたこと、学会での報告ができなかったことにより、残額が生じた。コロナウィルス感染症の状況をみながら、次年度計画の調査、再調査を実施するとともに、全国学会で成果の報告に努める。
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