2019 Fiscal Year Research-status Report
在豪日本人移住者の故郷概念の動態性―帰属意識における「日本」の位置づけの考察
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19K01236
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
長友 淳 関西学院大学, 国際学部, 教授 (50580643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 移民研究 / オーストラリア / 日本人移民 / 福祉 / 高齢化 |
Outline of Annual Research Achievements |
在外研究期間を取得した2019年度は、オーストラリア・ブリスベン(受け入れ先クイーンズランド大学)にてフィールドワークを行った。フィールドワークでは、参与観察、インフォーマル・インタビュー・半構造化インタビューを実施し、在豪日本人の帰属意識、特に、アイデンティティのラベルとして「日本」や「ニッケイ」がどのような意味を持つのかという点について考察した。また、それに関連して、現地では一世の高齢化と福祉の問題が過去数年で大きな課題となっており、それに伴い、相互扶助組織も設立されている。フィールドワークでは、それらの日系組織の活動に関わる中で、これらの組織の運営に関わる日本人自身のアイデンティティ・ポリティクスの研究や、日本語や日本食といった「ナショナルなるもの」が多文化社会において実践される場の理論的解釈などを行った。これらの研究の成果の一部を2019年9月の国際学会Internationale Akademie, "Migration and History Education"(於 ドイツTuzing)にて発表したほか、アウグスブルク大学における講演(2019年8月20日)、University of Queenslandにおける講演(MAJIT Seminar 2019年9月27日)、ブリスベンの公民館における講演(於IAH Community Hub 2020年2月11日)にて研究成果の一部を発表した。また、これらの研究内容は、2020年5月の日本文化人類学会にて発表予定(査読通過済)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、計画段階では、一世の高齢化とそれを在豪日本人コミュニティでどのようにケアしていくのかという「福祉」の視点が欠けていた。また、過去1~2年で急速に一世の福祉を含む在豪日本人の組織が複数形成されていた動きを捉えられていなかった。そのため、フィールドワークと同時進行で福祉の視点やそのフィールドワークを追加する必要があった。しかし、ゲートキーパーに恵まれたこともあり、綿密な参与観察をブリスベンの福祉団体の一つで行うことができ、来年度以降の出版につながる質的データを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度以降は、コロナウィルスの終息状況を考慮しながらの動きとなる。2020年5月の時点で、日本と調査地(ブリスベンとその周辺部)を結ぶ飛行機は運航が再開されていない。そのため、2020年5月の学会発表後は、その内容を論文化する作業を行う予定である。また、オーストラリアへの航空便が再開されない状況下では、共通テーマを軸に、たとえば、同じく移住1世の福祉の問題が顕在化している別の地域でのフィールドワークをも視野に入れる。
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