2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K01272
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Research Institution | Hiroshima Institute of Technology |
Principal Investigator |
本多 康作 広島工業大学, 情報学部, 准教授 (70733179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八重樫 徹 広島工業大学, 工学部, 准教授 (20748884)
萬屋 博喜 広島工業大学, 環境学部, 准教授 (00726664) [Withdrawn]
谷岡 知美 広島工業大学, 工学部, 准教授 (60548296)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 差別発言(ヘイトスピーチ) / J.L.オースティン / 発話行為論(sppch-act theory) / 発語内の力(forces) / 詩と猥褻表現 / 「吠える」裁判(1957) / 遂行的発言の理論 / アレン・ギンズバーグ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、昨年度からの継続研究である2種類の研究作業を実施し、特に理論研究において一定の成果を得た。まず2種類の研究作業とは、(1)差別発言(ヘイトスピーチ)に関連した国内外の文献を収集し研究分担者と29回の文献研究会を実施したこと、(2)研究協力者である加藤浩介氏を中心にマルチエージェントシミュレーションを用いた差別のシミュレーションに関する継続研究を推し進めたことである。そして(1)は理論研究、(2)は実証研究に位置づけうる。 先述した通り今年度の研究成果としては特に(1)があり、その内容は更に次の2種類にわかれる。1つは、「差別発言の潜在力―発話行為に伴う力(forces)とは何か―」であり、もう1つは、「詩と猥褻表現―J.L.オースティンの観点からみた『吠える』裁判(1957)におけることばの猥褻性」である。前者は研究代表者である本多康作が2021年11月20日の「日本法哲学会(分科会)」で報告予定のタイトルであり、後者は研究分担者である谷岡知美氏が2021年6月5日の「アメリカ学会 第55回年次大会 自由論題セッション」で報告予定のタイトルである。 これら2つの研究は共に、J.L.オースティンの発話行為論(sppch-act theory)内部における未解明な理論的要素(発語内の力/特別な状況における遂行的発言の理論)を解明しつつ、オースティンの方法論を具体的な現象(差別発言/猥褻表現)に適用し、それら現象の問題の所在を明らかにするものである。 2020年度はこのように本研究課題の中心に位置する理論研究(その中心概念)の解明が進展し、次年度の研究基盤を構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度末の計画では、実証研究として、①実態調査と②ソーシャルメディアの統計分析に着手する予定であった。しかし新型コロナウィルスの出現により、これら研究に着手することができなくなった。①と②は連動した研究として想定していたためである。 しかし理論研究としては、予定していたよりも多く、研究分担者との文献研究会を開催でき、本研究課題の中心課題の1つであるJ.L.オースティンの発話行為論内部の未解明な要素(特に発語内の力(illocutionary forces))の解明に近いづいたこと、そしてその成果として次年度(2021年度)に2つの学会報告を予定できた。 更にMary Kate McGowan氏の論文(On Covert Exercitives: Speech and the Social World)に関し、氏から翻訳許可を得て、翻訳作業を進めることもできた。 以上から現在の進捗状況は、全体としては、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、理論研究としては、昨年度に引き続き、研究分担者との文献研究会を定期的に開催し、本研究課題の理論的側面に関しては一定の結果を出す予定である。具体的には、2つの学会(日本法哲学会/アメリカ学会)での報告後に、報告内容を論文としてまとめ、それぞれの学会誌に投稿し査読に付す予定である。 実証研究としては、引き続き①マルチエージェントシミュレーションを用いた差別のシミュレーション研究を進め、更にこれまで計画通りに進めることができていない②ソーシャルメディアの統計分析に何とか着手したいと考えている。そのためには、当初計画を修正し、実態調査をいったん諦め(新型コロナウィルスの収束状況が不透明なため)、研究協力者に相談し、研究計画を再考する予定である。 なお今年度は、本研究課題の最終的な成果物としての書籍(論文集)刊行に向けて、具体的な計画(出版社との交渉、書籍の構成等)にも着手する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの出現により、2020年度に予定していた実証研究の一部である実態調査の研究や、理論研究のための国内および国外出張ができなかったため、旅費等に関し未使用額が生じた。 2021年以降、新型コロナウィルスの状況を勘案しつつ、当該旅費等を使用し、国内および国外出張を計画し、差別発言(ヘイトスピーチ)に関連する調査、報告、そして外国研究者との意見交換を行う予定である。
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Research Products
(2 results)