2019 Fiscal Year Research-status Report
トランプ政権下アメリカの対テロ・犯罪政策とマイノリティ市民の自由に及ぼす影響
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19K01275
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
今野 健一 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (70272086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 早苗 仙台白百合女子大学, 人間学部, 教授 (90285685)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 警察活動 / 市民的自由 / ストップ・アンド・フリスク / 警察官装着カメラ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は研究初年度ということもあり、本研究課題の研究目的に即して広く文献のリサーチを行い、文献・資料のリストを作成するとともに、かかるリストに基づき研究資料の収集に努めることを主眼とした。年度末に向けては、本研究費支給以前の蓄積をも用いつつ、今期の研究成果の取りまとめを進め、3月に研究論文(研究分担者との共著)を研究代表者の所属大学の紀要に投稿し、現在査読中である。上記論文で明らかにしたのは次のことである。 研究代表者らは、かねて、合衆国憲法による市民的自由の保障の観点から、ニューヨーク市警察本部(New York City Police Department:NYPD)のポリシング(policing)の問題性を明らかにしてきた。上記論文では、日本の職務質問と所持品検査に近い概念であるストップ・アンド・フリスク(stop-and-frisk)の極端な実行というNYPDの政策について、2013年のFloyd訴訟連邦地裁判決が正面から違憲と判断した際、併せて、その抜本的な改革をも命じた事実に着目した。連邦地裁の野心的ともいえる改革プランの内容を詳しく紹介するとともに、現在も続行中の、裁判所命令に基づく問題解決の取組みのプロセスを検討することを目的に研究論文をまとめた。 上記論文では、裁判所、ニューヨーク市、NYPD、地域コミュニティという多くの当事者・関係者が連携・協力を図りつつ進めているポリシング改革の流れを明らかにした。一方で、是正に向けた努力が直面する難題にも注意を向けるべきであるとした。特に、多くの研究者や人権擁護団体の見解に照らして、改革の目玉の1つとされた警察官装着カメラ(Body-Worn Cameras)の導入が、メリットとともに多くのデメリット(リスク)を有するものであると指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の年度目標は、9・11テロ以降のニューヨーク市およびアメリカ合衆国における対テロ政策・治安維持政策、ニューヨーク市警察本部(NYPD)の組織と実際の取締り活動、刑事司法制度、憲法訴訟の事案、都市問題・都市政策、トランプ政権の各種政策とその社会的余波などに関する文献・資料の収集に努めることであった。幅広いリサーチに基づき、研究資料の収集計画を立て、順次それを実行した。研究資料の収集はおおむね順調に進捗した。さらに、「研究実績の概要」で記述したように、これまでの収集資料の一部を用いて、研究成果の一部を研究論文にまとめるなどした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年目も引き続き、研究目的に関連する文献・資料の収集に努めるとともに、それらの読解・分析に取り組む。また、長期休業期間を利用し、ニューヨーク市に赴き、現地での視察・見学を実施する予定としている。年度末までには、再び中間報告的な論稿を取りまとめることも考えている。
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Causes of Carryover |
研究資料(図書)のうち特に外国語書籍の入手については、必ずしも想定した通りには進まず(出版情報の変更、入手予定の遅延等)、また、年度末に本格化した新型コロナウイルスの感染拡大の影響で国内の研究機関の利用(旅費等)がかなわなかったこともあり、残額が生じる結果となった。次年度については、外国書籍等の入手について、より計画的な実行を心がける。なお、現地調査・視察の計画(場合により国内移動計画も)については、新型コロナウイルスの感染の終息を見通すことが困難であるため、状況に照らして臨機かつ適切に使用するよう努めたい。
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