2022 Fiscal Year Annual Research Report
トランプ政権下アメリカの対テロ・犯罪政策とマイノリティ市民の自由に及ぼす影響
Project/Area Number |
19K01275
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
今野 健一 山形大学, 人文社会科学部, 教授 (70272086)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 早苗 仙台白百合女子大学, 人間学部, 教授 (90285685)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ポリシング改革 / レイシャル・プロファイリング / 市民的自由 / プラック・ライブズ・マター / ストップ・アンド・フリスク |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の研究は、引き続き、文献等資料の収集とその読解を行いつつ、新聞報道等により、米国(特にニューヨーク市)の政治と社会の状況を確認すること、および、これまでの蓄積を踏まえて研究の総括を行うことを目指して行った。 本研究では、トランプ政権下の米国における犯罪対策が、マイノリティ市民の人権保障に及ぼす影響を考察することを主眼とした(残念ながらテロ対策にまでは手が回らなかった)。特に、ニューヨーク市の犯罪対策・治安維持政策の問題性に注目し、2013年の連邦地裁判決(Floyd判決)でShira Scheindlin裁判官によって命じられた、ニューヨーク市警察本部(New York City Police Department, NYPD)のポリシング改革の展開プロセスをたどる作業に力を注いだ。 研究期間中に取りまとめた論考でも示したように、裁判所が指名したモニターを中心とする改革努力は、多くの点でポリシングに変化をもたらした。それは特に、悪名高かったストップ・アンド・フリスク政策の是正が進められた点に見出される。その一方で、黒人やラティーノに対する取り締まりの不釣り合いな集中は、依然として解消されないままとなっている。むしろ、COVID-19のパンデミックと、白人警察官による黒人男性の殺害事件(George Floyd事件)以降のプラック・ライブズ・マター(Black Lives Matter, BLM)運動の再上昇という状況下で、NYPDのポリシングにおける人種差別的な体質が露呈するなど、深刻な問題のあることが浮き彫りになった。 NYPDのポリシング改革は、連邦のモニターによるものだけでなく、地域コミュニティを巻き込んだ展開を見せており、この点の継続的な観察と分析は、レイシャル・プロファイリングが問題化している日本への示唆にも富み、重要な意味をもつと考えられる。
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Research Products
(1 results)