2019 Fiscal Year Research-status Report
Significance and Limitations of the UNCLOS Dispute Settlement Procedure
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19K01311
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西本 健太郎 東北大学, 法学研究科, 教授 (50600227)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海洋法 / 国際紛争解決 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国連海洋法条約の紛争解決手続が、当該条約体制においてどのような意義と限界を有しているかを、現実の裁判実践に即して改めて検討することである。より具体的には、第1に、国連海洋法条約の紛争解決手続は、条約の起草時において期待され、その意義として現在も一般的に理解されている機能をどの程度果たせているのか、そして、第2に、現実の紛争解決制度の利用のあり方は、その本来の制度趣旨との関係でどのようなものとして捉えられるのか、を問題とするものである。 研究課題の初年度である本年度においては、これらの問題を検討する前提として、まず、国連海洋法条約の紛争解決手続に関する先行研究を収集・整理した。その上で、第1のアプローチとして、必ずしも二国間に生じている紛争の一回的な全面解決を目的としていないと見られる紛争解決手続の利用事例の検討を始め、こうした事例における国連海洋法条約第15部の下での裁判所の管轄権の限界に関する問題や、義務的な司法的紛争解決手続が二国間の紛争解決において果たす役割を検討することで、本研究が対象とする課題を解明する手がかりとすることにした。具体的には、「南シナ海事件」、「チャゴス諸島海洋保護区事件」、「黒海、アゾフ海及びケルチ海峡における沿岸国の権利に関する事件」を取り上げて検討を行った。 また、第2のアプローチとして、国連海洋法条約の下での管轄権配分に関わる近年の判決を取り上げ、紛争解決手続を通じて、関係国の利益及び権利・義務のバランスがどのように実現されているのかの検討を行った。具体的には、「小地域漁業委員会(SRFC)勧告的意見」や「ノルスター事件」を検討し、従来の管轄権の配分に関する理解について一定の修正をもたらすような展開が生じていることについて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題が最終的な目的とする理論的な課題に対して、具体的な事件の検討を通じて検討を進めることができており、最終的な研究目的との関係でも既に一定の知見が得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
研究テーマに関連する先行研究を踏まえつつ、具体的な判例の研究を継続して、理論的な課題への回答に繋げることを予定している。コロナ禍により、研究に当てられる時間の低下や文献の入手に関する困難が生じつつあるが、可能な限り影響を最小限に抑えつつ研究を継続することを予定している。
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Causes of Carryover |
計画的に研究を進めたが、比較的少額の残額が残り、コロナ禍の影響で必要な洋書の年度内の購入に支障が生じうる事態となったため、無理に執行することはしなかった。
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Research Products
(3 results)