2019 Fiscal Year Research-status Report
企業グループにおける企業統治の健全性確保――少数派株主の権利強化を中心に――
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19K01371
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大川 済植 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (10382590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 親子会社 / 企業統治の適法性確保 / 少数派株主の権利強化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度では、2018年度科研課題(洪(旧姓)済植「親会社等の経営責任」『島大法学』61巻3・4号79-140頁(2018年3月))に関する研究を発展的に推進した。 この研究においては、親会社等の子会社等への不当な経営関与行為によるその子会社及び少数派株主に対する責任について、比較法的研究対象の範囲を英国法、韓国法へと広げるとともに、その研究成果を公表した(『私法』81号199-206頁(2019年8月))。 その次に、親子会社に関する規律において、企業グループ運営における系列子会社及びその少数派株主ならびに関連会社の利益を保護するための研究に取り組むべく、大阪市立大学の高橋英治教授との比較法的共同研究に従事し、その研究成果を公表した(高橋英治=大川済植「事実上の機関の法制の比較研究ー事実上の機関の法理が日本の親子会社法制に与える示唆について(1)ー」『法学雑誌』平覚教授退任惜別記念号65巻3・4号1-22頁(2019年12月)。 最後に、2019年度に採択された科研課題(「企業グループにおける企業統治の健全性確保―少数派株主の権利強化を中心に―」)に関する研究テーマについての研究調査を行った。同年度に採択された科研課題に関する研究においては、過年度の科研課題を継承的かつ発展的に推進させていくという観点に立ち、企業グループにおける支配的関係にある親会社等の不当な経営関与行為から系列子会社等及びその少数派株主の利益を保護するためには、とりわけ少数株主権の権利を強化する必要があるという認識から、過年度の科研課題の継承発展的な研究推進として「企業のディスクロージャーに関する比較研究」を行い、その研究成果を公表した(大川済植「企業のディスクロージャーに関する一考察―韓国法との比較検討を中心に」関西法律特許事務所開設五十五年記念論文集268-308頁(第一法規、2020年3月)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に採択された基盤研究(C)に関する研究として、2019年度においては、次のような研究テーマに関する研究計画に従って順次に研究を推進した。前記の研究実績の概要にも示されているように、2019年度に採択された基盤研究(C)に関する研究では、2015年度に採択された過年度科研課題に関する研究テーマ(「親会社の法的規制と企業開示制度」)との関係設定において横断的な研究関連性を重視するとともに、2019年度採択課題については継承発展的な比較法的研究を推し進める必要性があると考えている。 このような観点から、2019年度においては、過年度の科研課題に関する研究を継承的かつ発展的に推進するべく、2019年度に採択された科研課題(「企業グループにおける企業統治の健全性確保―少数派株主の権利強化を中心に―」)に関する比較法的研究について当該研究課題の研究実施計画に従って研究調査を行うとともに、その研究成果としては2018年度に開催した日本私法学会で報告した内容をその機関紙である『私法』81号(2019年9月)に公表することができた。 さらに過年度採択研究課題に関する発展的な研究推進として、大阪市立大学の高橋英治教授とのヨーロッパにおける比較法的研究を共同で推進することによって、研究対象の範囲を広げ、その成果として事実上の機関法理に関する新たな考えを学界に反映することができた。 前述のように過年度の研究課題である少数派株主の利益を保護するためには、とりわけ企業グループにおける系列子会社の少数株主権の権利を強化する必要があるという認識から、過年度の科研課題の継承発展的研究推進として「企業のディスクロージャーに関する比較法的研究」を行い、その研究成果を公表できた。 以上のような理由から、2019年度の研究推進においては、当該科研課題に関する研究がおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では、2019年に採択された科研課題(「企業グループにおける企業統治の健全性確保―少数派株主の権利強化を中心に―」)に関する研究推進の2年目として、まず過年度採択科研課題(「親会社の法的規制と企業開示制度」)に対する継承的かつ発展的な研究を横断的に推進するべく、日本における事実上の取締役に関する再考察を行い、この法理に関する新たな視点から得られた考えを、還暦記念論文集(商事法務2020年発行予定)に公表する予定である。 その次に、親会社等を中核とする企業グループ運営における系列子会社およびその少数派株主の利益を保護する観点から、大阪市立大学法科大学院の高橋英治教授との比較法的共同研究を行う。すなわち、前記の事実上の機関法理に関して、欧米法・韓国法における法制度上の現状について分析し、日本法への示唆を具体的に行う。そして、その研究成果を学術雑誌である『法学雑誌』(2020年12月脱稿予定)に公表する予定である。 最後に、2019年度採択科研課題(「企業グループにおける企業統治の健全性確保―少数派株主の権利強化を中心に―」)に関する研究を過年度採択科研課題との横断的な比較法的研究を推進する。 同年度の科研課題に関する研究においては、企業グループにおける系列会社および少数派株主の利益保護に関する研究を推進する。特に上場会社における少数株主権を強化する研究推進の一環として、上場企業における企業ディスクロージャーに関する比較法的研究を行う。 したがって、この研究においては、上場会社を念頭においた比較法的研究を過年度採択科研課題に対する継承発展的な研究として横断的に推進するべく、金融商品取引法における一般投資家保護のための少数株主権強化に関する比較法的研究を推進するとともに、その研究成果を所属校の学術雑誌である『桃山法学』に公表する予定である。
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Causes of Carryover |
2019度年末の所属機関の変更や新型コロナウィルスの感染拡大により、当初計画したとおりに情報収集のための研究調査を行うことができず、当初予定していた使用額に差異が生じたためである。 前記の当該年度の所要額に過年度の未使用額41299円を合わせた助成金については、本研究課題に関する情報収集や研究調査、および研究図書の購入費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)