2020 Fiscal Year Research-status Report
企業グループにおける企業統治の健全性確保――少数派株主の権利強化を中心に――
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19K01371
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
大川 済植 桃山学院大学, 法学部, 教授 (10382590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 企業グループ / 企業統治の健全性確保 / 系列子会社の利益保護 / 系列子会社の少数派株主の利益保護 / 少数株主の権利強化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度では、2019年度採択科研課題(大川済植)「企業グループにおける企業統治の健全性確保―」に関する研究について次のように段階的かつ発展的に推進した。 この研究課題は、企業グループにおける親会社等の子会社等への不当な経営関与行為から少数派株主の利益保護および少数株主の権利強化に関する会社法・金融商品取引法上の諸問題について比較法的研究を推進しようとするものである。 2020年度前半では、研究課題に関する実証法的研究を進めるべく、親子会社間の不公正取引に関する文献情報を収集し、分析・検討するとともに、その研究成果については早稲田大学商法研究会で個別研究報告を行った(報告テーマ;「子会社への貸付けを決議した取締役・執行役に善管注意義務違反はないとされた事例」)。当研究会での商事法判例研究報告以降、当研究会で行われた質疑応答の内容を中心に研究報告内容の全般に亘って批判的な観点から再検討に取り組み、科研課題に関する商事法判例研究成果を公表した(大川済植「判批」『金融・商事判例』1601号 2-7頁(経済法令研究会、2020年10月15日))。 その次に2020年度後半では、企業グループの運営における親会社とその系列子会社との取引において、系列子会社の取締役等の役員を選解任できる権利を有する親会社等の支配株主が系列子会社の取締役等の背後で自己または第三者に有利な取引を指図する親子会社間の非通例的取引を通じて系列子会社およびその少数派株主の利益を侵害する場合における会社法上の問題点について取り組み、かかる問題を解決するために機能する判例法理について再考察を行い、その研究成果を公表した(「事実上の取締役の法理に関する再考察」斎藤真紀ほか編『企業と法をめぐる現代的課題(川濵昇先生・前田雅弘先生・洲崎博史先生・北村雅史先生還暦記念)』327-348頁(商事法務、2021年1月))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度採択基盤研究(C)に関する研究として、2020年度においては、次のような研究計画に従って順次に研究を推進することができた。2019年度採択科研課題は、2015年度に採択された過年度科研課題に関する研究テーマ(「親会社の法的規制と企業開示制度」)について、会社法および金融商品取引上の横断的関連性を重視するべく、継承発展的な比較法的研究を段階的かつ発展的に推進しようとするものである。 このような科研課題に関する明確な研究目的を果たすべく、2020年度前半では、企業グループにおける不公正取引から系列子会社および少数派株主の利益を保護するための研究課題の計画に従って親子会社間における非通例的取引に関する実態調査を実施した。その上で、科研課題に関する法理論的研究を鮮明にするために行われた実態調査の内容に基づいて法実務上の商事法判例研究を進め、2020年度に開催された早稲田大学商法研究会で個別的研究報告を行うとともに、商事法判例研究の成果を『金融・商事判例』1601号 (経済法令研究会、2020年10月15日)に公表することができた。 さらに2020年度後半では、過年度採択研究課題との横断的な関連性を重視する研究を進める必要性があることから、親子会社間の取引の適法性を確保するための先行研究について分析・検討した上で、少数派株主の利益を保護するための判例法理の法解釈上の限界を明らかにし、かかる法解釈上の問題点を克服するための立法論上の問題解決策を提示することで、新たな考えを学界に反映することができた(斎藤真紀ほか編『企業と法をめぐる現代的課題(川濵昇先生・前田雅弘先生・洲崎博史先生・北村雅史先生還暦記念)』327-348頁(商事法務、2021年1月))。 以上のような理由から、2020年度の研究推進においても、当該科研課題に関する研究がおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度の前半では、2019年に採択された科研課題(「企業グループにおける企業統治の健全性確保―少数派株主の権利強化を中心に―」)に関する研究推進の3年目として、まず過年度採択科研課題(「親会社の法的規制と企業開示制度」)に対する継承的かつ発展的な比較法的研究を横断的に推し進めるべく、親会社等を中枢とする企業グループの運営における親子会社規律に関する比較法的共同研究を大阪市立大学法科大学院の高橋英治教授と共同で推進し、その成果を2021年5月21日に開催される関西商事法研究会で個別的研究報告を行う。当研究会での報告内容については、さらに共同研究者と比較法的検討を進めるとともに、比較法的研究成果を学術雑誌である『法学雑誌』(高橋英治=大川済植「事実上の機関の法制の比較研究―事実上の機関の法理が日本の親子会社法制に与える示唆について(2・完)」2021年10月脱稿予定)に投稿し公表する予定である。 2021年度の研究推進の最後の段階として、2019年度採択科研課題(「企業グループにおける企業統治の健全性確保―少数派株主の権利強化を中心に―」)に関する研究について、企業グループにおける企業統治の適法性を確保するという観点から、少数派株主の権利強化に関する各論的研究を、採択科研課題の完成年度である2022度までに順次に推し進めていく予定である。 まず第1段階として、会社法・金融商品取引法上、上場会社における少数株主権を強化するための前提要件として、少数株主の権利を適切に行使させるための手続き上の情報開示が重要であるという観点から、2020年10月24日に開催された関西商事法研究会で報告した内容(大川済植「上場企業における企業ディスクロージャーに関する一考察」)についてさらに比較法的研究へと発展的に推進するとともに、その研究成果については民事法学関連学術雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、当初計画したとおりに科研課題に関する情報収集のための研究調査を行うことができず、当初予定していた使用額に差異が生じたためである。 前記の当該年度の所要額に過年度の未使用額41299円を合わせた助成金については、本研究課題に関する情報収集や研究調査、および研究図書の購入費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)