2019 Fiscal Year Research-status Report
組織再編取引における利害調整のあり方と取締役の責任
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19K01382
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
永江 亘 南山大学, 法務研究科, 准教授 (20610786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 取締役の責任 / 組織再編 / 会社法 / 損害賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」欄の「(A)取締役の責任に関する米国判例のうち、1980年代のM&A隆盛期における判例までを第一期として、その潮流と理論的背景について現代的評価を含めて再検証」の通り、本年度は米国の判例のレビューを行った。とりわけ、2006年のCorwin判決を受けて、Van Gorkom判決の内容が修正されたと評価する研究が示されたことは、米国の会社法における取締役の責任に係る議論の大きな転換点となっていることを示している。また、これらの研究には、Van Gorkomの果たした歴史的役割について、簡潔ではあるが言及してるものもあり、現代米国の視点から、M&A隆盛期であり、取締役の責任の議論の興隆期における判決群の位置づけが明確化しつつ、その内容の問題についても、社会の変容と共に認知されている状況が明らかになった。このほか、Weinburger判決・Revlon判決などの位置づけについても同様に検討したが、Revlon基準については、差止基準の在り方に関する議論が見受けられた。これについては、本研究の目的からどこまで深追いするかについては今後の検討課題であるが、先行研究を踏まえつつ、本研究の目的を達成する上で、適切な範囲で進めていくことを予定している。 本研究では、この後1990年代の判例法理について検討していくことを予定しているが、一度本年度の研究を研究成果としてアウトプットすることで、抽出された要素を明確化することを予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に示した通り、研究計画「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」欄の「(A)取締役の責任に関する米国判例のうち、1980年代のM&A隆盛期における判例までを第一期として、その潮流と理論的背景について現代的評価を含めて再検証」のパートについて、概予定通りの進捗を得ることができた。もっとも、概要に示した通り、一部分について、取締役の責任という「賠償法理」に基づくサンクションを伴う問題との交錯点における議論が散見されたため、今後のどの程度この論点について検討を進めるかには検討が必要である。偏にリソースの分配の問題に帰着することとなるが、本年度実施予定の(B)についてまずは先行して検討しつつ、(A)の部分について研究成果のとりまとめ・公表を優先して行いたい。もっとも、当該研究成果の公刊については、予定している媒体が予定通りに機能するかに疑問がないわけではなく、この点については一定のリスクがあるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画「(3)本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとするのか」欄の「(B)1990年代から2010年までの第二期について、その潮流と理論的背景について現代的評価を含めて再検証」の通り、今後は1990年代から2010年までの、とりわけCorwin判決前後の状況の整理に努めたい。当該研究成果についても、次年度に続編として取りまとめて公刊することを予定している。
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Causes of Carryover |
書籍の購入につき、予定よりも早い購入をしたために、前倒し予算を計上しその残額について次年度繰り越ししようとしたものである。
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Research Products
(3 results)